この記事で学べること
- 米国のカントリーグループとは何か
- 国のグループが変わると、実務の何が変わるのか
- 「国が緩和された」=「その国なら自由」ではない理由
- 自社の国別マトリクスをどう保つか
最初に、これは米国の区分です
カントリーグループは、米国のEAR(輸出管理規則)が定める国の分類です。
日本の「グループA」(かつてのホワイト国)とは別物です。同じ国でも、日本の区分と米国の区分は一致しません。
日本の会社に関係するのは、米国原産の品物を第三国へ出すときです。米国の品物には米国のルールがついてくるため、相手国が米国のどのグループにいるかで、必要な手続きが変わります。



2026年7月14日、米国BIS(商務省 産業安全保障局)が、UAE(アラブ首長国連邦)の扱いを引き上げる最終規則を出しました。2026年7月10日施行です。
- D:3(化学・生物兵器の懸念)から削除
- D:4(ミサイル技術の懸念)から削除
- A:5(優遇される仲間の国)へ追加
懸念国側の2つの枠から出て、優遇側の枠に入ったということです。
- いつから:2026年7月10日 施行(連邦官報への掲載は7月14日)
- 誰に影響するか:米国原産の品物・技術を扱い、UAEとの取引がある会社
- やること:国別マトリクスの更新と、相手が「承認された名簿」に載っているかの確認
変わったこと①:使えるライセンス例外が増えた
ライセンス例外とは、一定の条件を満たせば個別の許可を取らずに出せる、という枠組みです。
D:3・D:4から外れたことで、化学・生物やミサイル技術を理由に規制されている品目について、TMP・GOV・TSU・AVS・APRといった例外がUAE向けに使えるようになりました。ACEとBAGについても、使える範囲が広がっています。
あわせて、ミサイル関連で米国人の活動を制限する規定(第744.6条(b)(2))と、ミサイル関連の用途規制(第744.3条(a)(1)・(3))が、UAE向けには適用されなくなりました。
変わったこと②:STAという大きな例外が視野に入った
A:5に入ったことで、STA(戦略的貿易許可)というライセンス例外が使えるようになりました。
STAで扱える範囲は広く、規則には次のように書かれています。
- 軍用品目
- 一定の商用衛星・宇宙関連品目
- 半導体の後工程、石油・ガス生産、民生用原子力発電などに使える先端的なデュアルユース品目
さらに、先端コンピューティング品目へのライセンス不要のアクセスも認められました。2025年5月の米UAE間のAI協力の枠組みに沿ったものだと説明されています。
かなり大きな緩和です。 ただし——ここからが本題です。
いちばん大事なところ:緩和されたのは「国」ではなく「名簿」です

「UAEがA:5に入った。だからUAE向けならSTAが使える」——これは間違いです。
規則は、UAEの欄に脚注5を付けました。そして新しい規定(第740.2条(a)(26))で、STAが使える相手を絞っています。
使えるのは、最終需要者と全ての需要者が、EAR第740編の補足資料8に載っている「承認された相手」である場合だけです。
補足資料8の名前は、そのまま「UAEにおける先端コンピューティング品目およびライセンス例外STAの、承認された最終需要者・需要者」です。
つまり、こうなります。
UAEがA:5に入った
↓
それだけでは、STAは使えない
↓
相手が補足資料8の名簿に載っているか?
↓
載っていれば使える。載っていなければ使えない
国の格上げと、相手ごとの承認が、二段構えになっています。
誰が名簿に載っているのか
規則には、次のように書かれています。
- UAEの政府機関(国防省・軍を含む)は、2026年7月10日時点でSTAの全面利用が承認された相手
- ただし、この承認は政府が所有する企業や、政府機関の請負業者・補助金の受給者には及ばない
- UAEの民間企業がSTAを使いたい場合は、BISに事前照会(アドバイザリー・オピニオン)を出して承認を求める(第748.3条(c))
- BISは個別に判断する。判断材料には、申請者の法令順守の体制と実績が含まれる
「政府機関はよい。だが政府系企業は別」という線引きです。ここは読み飛ばすと必ず間違えます。
もうひとつ大事なところ:規制そのものは消えていません

規則には、はっきりこう書かれています。
UAEをD:3・D:4から外したことは、UAEに対するCCLベースの許可要件を取り除くものではない。
具体例も示されています。ミサイル技術を理由に規制されている品目は、引き続きEARに基づく許可が必要です。化学・生物を理由とする品目も同じです。
変わったのは「使える例外が増えた」ことであって、「規制がなくなった」ことではありません。
この2つは、実務ではまったく違います。
- 規制がなくなる → 何も要らない
- 使える例外が増える → 例外の条件を満たしているかを、毎回確かめる必要がある
ライセンス例外は、条件を満たさなければ使えません。STAにも要件があり(第740.20条)、記録の保存義務もあります。そして、ライセンス例外そのものが使えなくなる一般的な制限(第740.2条)にも当たらないことを確認する必要があります。
「例外が使える」は、「手続きが要らない」ではありません。
明日からやること
① 国別マトリクスに「いつ時点か」を書く
多くの会社が、国ごとの扱いを一覧表にしています。その表に、基準日が書いてありますか。
□ 国別マトリクスに「◯年◯月◯日時点」と書いてあるか
□ 米国のカントリーグループと、日本のグループAを別の表にしているか
□ 混ぜて1つの表にしていないか
日本の区分と米国の区分を1つの表に混ぜている会社は、いつか必ず間違えます。 表を分けてください。
② 「国」で終わらせず「相手」まで見る
今回のUAEのように、国が緩和されても、使えるのは承認された相手だけという作りが増えています。
国の欄が緑になった時点で審査を終える運用は、もう通用しません。
③ 緩和のニュースこそ、原文に当たる
締める改正は慎重に読まれます。緩める改正は「よかった」で終わりがちです。
今回のように、緩和の中身に細かい条件が付いていることは珍しくありません。緩和のときほど、条文の但し書きを読んでください。
まとめ
- 2026年7月10日施行で、米国がUAEをD:3・D:4から削除し、A:5へ追加した
- TMP・GOV・TSU・AVS・APRなどのライセンス例外がUAE向けに使えるようになった
- ミサイル関連の一部の活動規制・用途規制が、UAE向けには適用されなくなった
- STA(戦略的貿易許可)が視野に入り、軍用品目・商用宇宙品目・先端デュアルユース品目まで対象になりうる
- ただしSTAが使えるのは、EAR第740編 補足資料8の名簿に載った相手だけ
- UAE政府機関は承認済み。政府系企業・請負業者は含まれない
- 民間企業はBISへの事前照会で承認を求める(第748.3条(c))
- D:3・D:4からの削除は、CCLベースの許可要件を消すものではない
- 変わったのは「使える例外が増えた」こと。規制がなくなったわけではない
さて、自社の国別マトリクスには、基準日が書いてあるでしょうか。
そして、その表は「国」で終わっていませんか。「相手」まで見る欄はありますか。


※ 本記事は、米国商務省 産業安全保障局(BIS)が連邦官報に掲載した最終規則「Enhanced Favorable Treatment for the United Arab Emirates Under the Export Administration Regulations」(2026年7月14日掲載・2026年7月10日施行)によります。米国の規制であり、日本の外為法上のグループA(旧ホワイト国)とは別の制度です。 ライセンス例外の利用には個別の要件があります。実際の判断にあたっては規則の原文と、EAR第740編 補足資料8の最新版をご確認ください。制度は今後も改正されることがあります。
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