この記事で学べること
- 米国のドローン輸出規制が、いつ・どこが緩んだのか
- 「滞空3時間」という新しい境目の意味
- 緩んでも残っている規制はどれか
- 日本の会社が、明日から何を確認すればよいか
最初に、これは米国の規制です
この記事で扱うのは、米国のEAR(輸出管理規則)の改正です。
日本の外為法とは、別の建て付けです。 日本の該非判定(外為令別表・貨物等省令)は、この改正では1ミリも変わりません。
では、なぜ日本の会社に関係があるのか。
米国原産の製品・技術は、日本に運ばれたあとも米国の規制がついてくるからです。これを再輸出規制と呼びます。日本から第三国へ出すとき、日本の許可とは別に、米国のルールも見る必要があります。



判断に使う数字:風にどれだけ耐えられるか(風速耐性)→ この項目を削除
滞空時間の境目:大幅に引き上げ → 3時間
3時間未満のドローン:多くの国向けに許可が必要 → 国家安全保障(NS)の規制を外す
いつから:2026年8月13日 施行(連邦官報への掲載は8月14日)
誰に影響するか:米国製のドローン・部品・ソフト・技術を扱い、それを日本から第三国へ出す可能性のある会社
やること:サプライヤーからもらったECCN(米国の品目分類番号)の一覧を、最新のものに取り直す
そもそも、なぜ緩めたのか
背景にあるのは、2025年6月6日の大統領令14307です。
日本語にすると「米国のドローンの優位性を解き放つ」という題名で、商務省に対して「米国製ドローンをパートナー国へ速やかに輸出できるよう、規則を見直しなさい」と指示したものです。
その指示を受けて、BIS(商務省 産業安全保障局)は2026年1月に暫定的な規則を出し、意見を集めたうえで、今回の最終規則にまとめました。
「安全保障のために締める」改正が多いなかで、これは緩める側の改正です。
変更点①:風にどれだけ耐えるか、を見なくなった
これまで、ドローンが規制対象かどうかを決める項目のひとつに、風速耐性がありました。「どれくらいの突風のなかでも飛べるか」という性能です。
今回、この項目が判断材料から外れました。
理由は単純で、技術の進歩に合わなくなったからです。安い民生ドローンでも風に強いものが当たり前になり、この数字で軍用性を測れなくなっていました。
変更点②:境目が「滞空3時間」になった

いちばん実務に効く変更がこれです。
ドローンの分類番号(ECCN 9A012.a)が、滞空時間3時間を境に分かれるようになりました。
- 3時間未満:国家安全保障を理由とする規制(NS)を外す。残るのはテロ支援国向けの規制(AT)だけ
- 3時間以上:これまでどおり国家安全保障の規制が残る
3時間未満のドローンは、許可が必要な仕向地が大きく減りました。
補足:改正前の数字は、資料によって書き方が違います
細かい話ですが、実務では大事なので書いておきます。
BISの要約文には「30分から3時間へ」とあり、規則本文の改正指示には「1時間以上から3時間以上へ」とあります。
新しい境目が3時間であることは、どちらも同じです。ただ、改正前の数字を社内資料に書き写すときは、要約ではなく規則本文の改正指示を見てください。要約は読みやすく書かれているぶん、条文そのものではありません。
変更点③:軍用のドローンは別の番号へ
軍用として「特別に設計」されたドローンは、これまでの9A012ではなく、軍用航空機を扱う番号(9A610.a)で見ることが明確になりました。
あわせて、そうしたドローン向けの部品の一部が、より軽い扱いの区分(9A610.y.33)へ移されています。「軍用機の部品」といっても、軍事的な能力を大きく左右しないものまで重く縛る必要はない、という整理です。
緩んでも、残っているもの
ここが本題です。 「規制が緩んだ」という見出しだけで動くと、危ないところがあります。

残っているものが、はっきり書かれています。
- 軍事用途・軍事需要者向けの規制(EAR第744.21条)は維持。滞空3時間未満のドローンでも、軍事目的だと分かっていれば止まります
- 航続距離300km以上のもの、またはミサイル技術の区分(9A120)に当たるものは、ミサイル技術を理由とする規制がそのまま
- 滞空時間に関係なく、次のものを積んでいれば国家安全保障の規制が残ります
- 特定の熱画像装置(6A003)
- 特定のレーザー(6A005)
- ジャイロを使った航法装置(7A001・7A002・7A003・7A005)
いちばん下の項目は、狙いがはっきりしています。「安い低性能ドローンに、高性能な目や頭を載せて持ち出す」抜け道をふさぐためです。取り外せる高性能な装備を積んでいれば、機体が軽い扱いでも規制は残ります。
「ドローン本体の分類が軽くなった」ことと、「積んでいるものを見なくてよい」ことは、まったく別です。
日本の会社が明日からやること
① ECCNの一覧を取り直す
米国製の品物を扱っているなら、サプライヤーからECCN(米国の品目分類番号)をもらっているはずです。
今回の改正で、同じ製品でも番号や規制理由が変わっている可能性があります。
□ 米国製ドローン・部品・ソフトの一覧を出す
□ サプライヤーに「改正後のECCNと規制理由」を確認する
□ 社内の再輸出判定シートを差し替える
② 「緩んだ」を社内に伝えるときは、残ったものとセットで
営業部門には「アメリカが緩めたらしい」という話だけが伝わりがちです。
軍事用途の規制とエンティティリストは残っていることを、同じ紙に書いてください。分類が軽くなっても、相手と用途の確認は今までどおり必要です。
③ 訂正が出ていることも押さえておく
2026年8月28日に、この規則の訂正が出ています。中身は規則本文の1か所の誤植を直しただけで、規制の内容は変わっていません。
ただ、米国の規則は「出たあとに訂正が出る」ことがあるという点は、覚えておいて損がありません。社内資料に写すときは、訂正の有無も確認してください。
まとめ
- 米国BISが、2026年8月13日施行でドローンの輸出規制を緩めた
- 背景は2025年6月の大統領令14307。「緩める側」の改正
- 風速耐性が判断材料から外れた
- 新しい境目は滞空3時間。3時間未満は国家安全保障の規制が外れ、テロ支援国向けの規制だけになる
- ただし軍事用途・軍事需要者の規制(744.21)は維持
- 航続300km以上・ミサイル技術該当は規制が残る
- 熱画像・レーザー・ジャイロ航法装置を積んでいれば、滞空時間に関係なく規制が残る
- 日本の会社はECCN一覧の取り直しから始める
さて、自社が扱っている米国製品のECCNの一覧は、いつ取ったものでしょうか。
1年以上前のものなら、それはもう現状と違っているかもしれません。


※ 本記事は、米国商務省 産業安全保障局(BIS)が連邦官報に掲載した最終規則「Streamlining Export Controls for Drone Exports」(2026年8月14日掲載・2026年8月13日施行)および同規則の訂正(2026年8月28日掲載)によります。米国の規制であり、日本の外為法上の該非判定とは別の制度です。 実際の判断にあたっては、規則の原文と、取引先から提供される最新のECCN情報をご確認ください。制度は今後も改正されることがあります。
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