この記事で学べること

  • エンティティリストから削除されるとは、どういうことか
  • 削除を追えていないと、実務で何が起きるか
  • 社名だけの照合では足りない理由
  • 削除を決める仕組み(追加より削除のほうが難しい理由)

最初に、これは米国のリストです

エンティティリストは、米国のEAR(輸出管理規則)にあるリストです。

日本の「外国ユーザーリスト」とは別のものです。名前が似ているので混ざりやすいのですが、作っている国も、載る基準も、載ったときの効果も違います。

日本の会社に関係するのは、米国原産の品物を扱うときです。米国の品物は日本に来たあとも米国のルールがついてくるため、取引相手がこのリストに載っていないかを見る必要があります。

みなとくん船長、リストって、増えていくものだと思っていました
あんぼう船長増えるほうが目立つからのう。じゃが、減ることもある。そこを見落とすと、止めなくてよい取引まで止めてしまうぞ
## 今回起きたこと
同じ日に、2本出ました
同じ日に、2本出ました

2026年8月24日、米国BIS(商務省 産業安全保障局)が、エンティティリストに関する規則を2本、同じ日に出しました。どちらも2026年8月21日施行です。

  • 1本目:中国(香港)向けに掲載されている先について、住所2件をリストから削除
  • 2本目:トルコ向けの1社をリストから削除

どちらも「追加」ではなく「削除」です。

  • いつから2026年8月21日 施行(連邦官報への掲載は8月24日)
  • 誰に影響するか:米国原産の品物・技術を扱い、取引先をエンティティリストで照合しているすべての会社
  • やること自社のスクリーニングリストを、削除ぶんも含めて更新する

削除を追えていないと、何が起きるか

追わないと、止めすぎる
追わないと、止めすぎる

輸出管理では「見落として出してしまう」ことばかりが心配されます。もちろんそれが最悪です。

でも、逆側の失敗もあります。

削除されたのに古いリストを使い続けると、もう制限がかかっていない相手を止め続けることになります。

  • 受注できたはずの取引を断る
  • 取引先に「おたくは規制対象だ」と誤って伝えてしまう
  • 社内の審査に、要らない時間をかけ続ける

これは会社の損失であり、相手にも失礼です。

輸出管理の部門は「止めるのが仕事」と思われがちですが、止めなくてよいものを通すのも、同じくらい大事な仕事です。

社名だけの照合では足りません

リストは、社名だけではない
リストは、社名だけではない

今回の1本目が、この点をよく表しています。

削除されたのは会社そのものではなく、その会社に紐づいていた住所2件でした。会社の掲載は残っています。

つまり、エンティティリストは「社名」だけで管理されていません。

  • 社名
  • 別名(同じ相手が別の呼び方で載っていることがあります)
  • 住所

この3つがセットで載っています。だから、住所だけが消えるということが起こります。

実務でいうと、こうなります。

□ 相手の社名で照合している → それだけでは足りない
□ 相手の住所も見ているか
□ 別名(英語表記のゆれ・旧社名)も見ているか
□ 「同じ社名でも、住所が違えば扱いが違う」ことがあると分かっているか

同じ会社名でも、住所によって扱いが違うことがあります。 ここは社名照合だけのチェックでは絶対に拾えません。

なお今回の削除は、2025年11月に行われた関連会社の削除別名6件の削除に続くものだと、規則のなかで説明されています。ひとつの掲載が、何回かに分けて少しずつ整理されていくことがある、ということです。

誰が、どうやって削除を決めるのか

削除を決めているのは、ERC(エンドユーザー審査委員会)という組織です。

構成は、商務省(議長)・国務省・国防省・エネルギー省の代表で、必要に応じて財務省も加わります。1つの省庁だけでは決めません。

そして、ここが面白いところです。

  • リストに追加する決定多数決
  • リストから削除・修正する決定全会一致

載せるより、外すほうが難しいという設計になっています。1つの省庁でも反対すれば、削除されません。

「一度載ると簡単には消えない」と言われる理由が、ここにあります。

削除を求める道はあります

「載ったら終わり」ではありません。

EARの第744.16条に、掲載された側が情報を出して、見直しを求める手続きが定められています。今回の削除も、この規定に基づいて出された情報をERCが審査した結果です。

審査の進め方は、EARの第744編の補足資料5に書かれています。

時間はかかりますし、全会一致が要ります。 それでも、道そのものは用意されています。

事前の意見募集なしで、いきなり効力が出ます

もうひとつ、日本の感覚と違うところがあります。

米国の規則は、ふつう案を公表して意見を集めてから確定します。ところがエンティティリストの変更は、その手続きを踏まずに最終規則として出せます

根拠は2018年輸出管理改革法(ECRA)の第1762条(a)です。

実務への意味は、はっきりしています。

「そろそろ変わりそうだ」という予告が出ません。 気づいたときには施行されています。だから定期的に見にいくしかありません。

明日からやること

① 更新の頻度を決める

□ エンティティリストを何日おきに更新するか、決まっているか
□ 決まっていないなら、まず「月1回」と決める
□ 更新した日を記録に残しているか

頻度が決まっていないルールは、運用されていないのと同じです。

② 「追加」だけでなく「削除」も反映する

更新作業が「新しく載った先を足す」だけになっていないか、確認してください。

消えたものを消す作業も、同じ更新の一部です。

③ 照合の項目を増やす

社名だけで照合しているなら、住所と別名を加えてください。今回のように住所単位で動くことがある以上、社名照合だけでは判断を誤ります。

まとめ

  • 2026年8月24日、米国BISがエンティティリストの規則を2本同時に公表(2026年8月21日施行
  • 内容はどちらも削除(中国・香港向けの住所2件と、トルコ向けの1社
  • 削除を追えていないと、止めなくてよい取引を止め続けることになる
  • エンティティリストは社名・別名・住所で管理されている。社名だけの照合では足りない
  • 削除を決めるのはERC(商務・国務・国防・エネルギーの各省。必要に応じ財務省)
  • 追加は多数決、削除は全会一致。載せるより外すほうが難しい
  • 掲載された側が見直しを求める手続きはEAR第744.16条にある
  • エンティティリストの変更は事前の意見募集なしで施行される。予告はない

さて、自社のスクリーニングリストを最後に更新したのはいつでしょうか。

そして、その更新は「消えたものを消す」作業まで含んでいたでしょうか。

みなとくん船長、止めすぎるのも失敗なんですね
あんぼう船長うむ。輸出管理は、止める仕事ではなく、正しく判断する仕事じゃ。通してよいものを通せてこそ、会社の役に立つ
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※ 本記事は、米国商務省 産業安全保障局(BIS)が連邦官報に掲載した最終規則「Revisions to the Entity List」および「Removal From the Entity List」(いずれも2026年8月24日掲載・2026年8月21日施行)によります。米国の規制であり、日本の外国ユーザーリストとは別の制度です。 掲載・削除された個別の企業名は本記事では扱っていません。実際の照合にあたっては、EAR第744編 補足資料4の最新版をご確認ください。制度は今後も改正されることがあります。

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