de minimis(デミニミス)ルール、外国製品に含まれる米国原産品の割合が一定未満なら、その外国製品はEARの対象外になる、という考え方です。

日本語の解説では「25%」と紹介されることが多いのですが、それだけではありません

条文を見ると、2つのルールが並んでいます

ルール 条番号 しきい値 適用できる仕向地
10% De Minimis Rule §734.4(c) 10% 世界のどの国へでも
25% De Minimis Rule §734.4(d) 25% E:1・E:2以外

そして、もっと危ない落とし穴があります。

de minimisが「一切適用されない」品目が、条文に列挙されています。

含有率が5%でも、その品目に当たればEARの対象のままです。割合を計算する前に、除外リストを確認する。これが正しい順番です。

みなとくん船長、25%だと思っていました……
あんぼう船長間違いではないんじゃ。じゃがな、10%のほうを知らんと危ないでな
この記事は、現職で輸出管理・貿易実務に携わっている方に向けて書いています。

この記事を読むと、あなたの判断はこう変わります

  • 仕向地からしきい値を決めるという正しい順番が身につきます
  • 除外品目を先に確認することで、計算の徒労を避けられます
  • ソフトウェア・技術が絡む場合の固有の注意を把握できます
  • de minimisで外れてもエンドユーザー規制は別という点を押さえられます

この記事で扱うこと

この記事の後半では、判断の手順に落とし込みます。

  • E:1・E:2とは何かイラン・北朝鮮・シリア(E:1)/キューバ(E:2)。この4か国が分岐点
  • 判断の4ステップ:仕向地 → しきい値 → 割合算定 → 評価。なぜ仕向地から始めるのか
  • ★de minimisが一切適用されない品目:条文(§734.4(a))から拾った除外例(ECCN 4A003のAPP超の外国製コンピュータ/3B993該当装置/0A919該当のmilitary commodities/SME FDPルールFootnote 5 FDPルール関連 ほか)
  • 算定方法は Supplement No.2:「なんとなく金額比」では根拠にならない。論点4つ
  • ソフトウェア・技術の固有規定:単独提供の扱い/技術の混在(commingled)/License Exception ENCとの関係
  • Entity List等との関係:条文が明示する「de minimisの規定にかかわらず禁止されうる」の意味
  • 実務での6ステップ除外確認を仕向地確認の直後に置く理由
  • 記録に残す7項目:特に参照したeCFRの版(issue date)

2つのルールの違いは「どこへ送れるか」

2つのルールの違いは「どこへ送れるか」
2つのルールの違いは「どこへ送れるか」

条文の文言を見ると、違いがはっきりします。

10%ルール(§734.4(c))

the following reexports are not subject to the EAR when made to any country in the world

世界のどの国へでも適用されます。

25%ルール(§734.4(d))

... when made to countries other than those listed in Country Group E:1 or E:2

カントリーグループE:1・E:2以外の国に限られます。

「10%は世界中どこでも、25%はE:1・E:2以外」


1. E:1・E:2とは何か

E:1・E:2とは何か
E:1・E:2とは何か

上の図のように、カントリーグループE(Part 740 Supplement No.1)はE:1=テロ支援国(イラン・北朝鮮・シリア)E:2=一方的禁輸(キューバ)の2つです。

つまり

【イラン・北朝鮮・シリア・キューバ向け】
   → 25%ルールは使えない
   → 10%ルールのみ

【それ以外の国向け】
   → 25%ルールが使える

この4か国が分岐点です。

2. 判断の順番

① 仕向地を確認する
        ↓
② E:1・E:2(イラン・北朝鮮・シリア・キューバ)か?
   → はい → しきい値は 10%
   → いいえ → しきい値は 25%
        ↓
③ 自社製品に含まれる米国原産品の割合を算定する
        ↓
④ しきい値未満か?
   → 未満なら、EARの対象外になりうる
   → 以上なら、EARの対象

①から始めるのが確実です。しきい値が決まらないと、算定した数値をどう評価してよいか分かりません。

3. 最重要:de minimisが「一切適用されない」品目があります

最重要:de minimisが「一切適用されない」品目があります
最重要:de minimisが「一切適用されない」品目があります

ここが、実務でいちばん危ない落とし穴です。

§734.4(a)には、de minimisの適用が一切ない品目が列挙されています。

条文から拾うと、次のようなものです。

概要
ECCN 4A003に定めるAdjusted Peak Performance(APP)を超える外国製コンピュータ
ECCN 3B993のパラメータを満たす装置
ECCN 0A919に該当する外国製「military commodities」
SME FDPルールに関連する、ECCN 3B001等の一定のパラメータを満たす品目
Footnote 5 FDPルールに関連する、Category 3B の一定のECCNに該当する品目
そのほか、条文に列挙された品目

これらは、米国原産品の割合が何%であっても、de minimisで外れません。

【危ない判断】
米国原産品の含有率 5% → 10%未満 → EAR対象外だ!
        ↓
   実は §734.4(a) の除外品目だった
        ↓
   de minimisは適用されない → EAR対象のまま

割合を計算する前に、除外リストを確認する。これが正しい順番です。

4. 算定方法は Supplement No.2 に

「割合をどう計算するか」は、感覚では決められません。

条文はこう案内しています。

See supplement no. 2 of this part for guidance on calculating values.

Part 734 の Supplement No.2 に、算定手順と報告要件が定められています。

算定にあたっては、次のような点が論点になります。

□ 何を分母とし、何を分子とするか
□ どの時点の価額を使うか
□ 米国原産のソフトウェアをどう扱うか
□ 技術が混在(commingled)している場合の扱い

「なんとなく金額比で計算した」では根拠になりません。 Supplement No.2 の手順に従ってください。

5. ソフトウェア・技術には固有の注意があります

条文には、ソフトウェアと技術に関する個別の規定があります。

たとえば

  • 米国原産ソフトウェアが単独で(別々に)輸出・再輸出される場合、de minimis除外の対象にならず、EARの対象となる旨の規定
  • 外国製技術に米国原産の規制技術が混在(commingled)している場合、de minimis除外に依拠する前に踏むべき手続きがある旨の規定
  • License Exception ENCの分類を受けた米国原産品の扱いに関する規定

「貨物と同じ感覚でソフト・技術を扱わない」

ソフトウェアや技術が絡む場合は、条文の該当箇所を直接確認してください。

6. Entity List等との関係

Entity List等との関係
Entity List等との関係

もう一つ、条文が明示している重要な点があります。

... may be prohibited notwithstanding the de minimis provisions of the EAR

de minimisの規定にかかわらず禁止されることがある。という趣旨です。

つまり、de minimisで外れたと思っても、エンドユーザー規制は別に効きます

【誤解】de minimis で外れた → 何をしても自由
【正しい】de minimis はあくまで「EARの対象か」の話。
          相手が誰かによる規制は別に効く

7. 実務での手順

実務での手順
実務での手順
① 仕向地を確認 → しきい値(10%/25%)を決める
        ↓
② §734.4(a) の除外品目に当たらないか確認 ★最重要
   → 当たれば de minimis は使えない
        ↓
③ 米国原産品の含有割合を算定
   → Supplement No.2 の手順に従う
        ↓
④ ソフトウェア・技術が絡む場合、個別規定を確認
        ↓
⑤ しきい値未満なら、EAR対象外になりうる
        ↓
⑥ ただしエンドユーザー規制は別に確認 ★

②を①の直後に置くのが実務上のコツです。除外品目なら、割合を計算する意味がありません。

8. 記録に残すこと

□ 仕向地と、適用したしきい値(10%/25%)
□ §734.4(a) の除外品目に当たらないことの確認
□ 米国原産品の含有割合と、算定の根拠
□ 算定に使った資料(部品表・価額データ・サプライヤー回答)
□ ソフトウェア・技術の扱い
□ エンドユーザー規制の確認結果
□ 参照した eCFR の版(issue date)★

版(issue date)の記録が特に重要です。EARは改正が頻繁なので、「いつ時点の条文で判断したか」が分からないと、後から検証できません。

まとめ

  • de minimisは2種類10%(§734.4(c))世界のどの国へでも25%(§734.4(d))E:1・E:2以外
  • E:1=イラン・北朝鮮・シリア/E:2=キューバ。この4か国が分岐点
  • ★de minimisが一切適用されない品目がある(§734.4(a))。割合を計算する前に確認する
  • 除外例:ECCN 4A003のAPP超の外国製コンピュータ、3B993該当装置、0A919該当のmilitary commodities、SME FDPルール/Footnote 5 FDPルール関連 ほか
  • 算定方法はPart 734 Supplement No.2。感覚で計算しない
  • ソフトウェア・技術には固有の規定がある。貨物と同じ感覚で扱わない
  • de minimisで外れても、エンドユーザー規制は別に効く
  • 記録には適用したしきい値と、参照したeCFRの版を残す

さて、自社で de minimis を検討したことがある場合、§734.4(a) の除外品目を確認していたでしょうか。

次回は、EAR判定の入口、ECCNの読み方を扱います。5桁の数字とアルファベットが何を意味するのか、原文から整理します。

みなとくん船長、10%のほうを知らなかったのは、危なかったです
あんぼう船長気づけたならよい。じゃが、それより除外品目のほうがもっと危ないでな。順番を間違えんように
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※ 条文は eCFR Title 15 §734.4(2026年7月23日版)によります。EARは改正が非常に頻繁で、除外品目のリストも変わります。 実務では必ず eCFR で最新版をご確認ください。本記事は制度の枠組みを整理したものであり、個別事案の判断や割合の算定結果を示すものではありません。

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