2025年11月14日に公布された改正のうち、本体部分は2026年2月14日に施行されました。

つまり、すでに5か月以上前の話です。

2025年11月14日  公布
2025年12月15日  ★事前受付開始
2026年 2月14日  ★施行 ← すでに経過
2026年 2月16日  許可が下りはじめる

改正の中身は「重要・新興技術に関する輸出管理品目等の改正」。抽象的な言い方ですが、政令レベルで新規追加された貨物は3つです。

そして経済産業省は、その3つを項番付きで公表しています

貨物名 輸出令 貨物項番
ペプチドの合成を行うための装置 3の2項(2)10
高エントロピー合金の粉/耐火性金属・その合金の粉 5項(20)
FPGAを組み込んだモジュール、組立品、装置 7項(10の2)

3の2項(生物)・5項(先端材料)・7項(エレクトロニクス)、バラバラの分野に1つずつ入っています。

だから見落とされます。 1つの分野の担当者だけが見ていても気づけません。

みなとくん船長、半年前の改正を今さらですか
あんぼう船長そこがな、いちばん危ないところでな。公布のときは騒がれるが、施行のときは静かなんじゃ
この記事は、現職で輸出管理・貿易実務に携わっている方に向けて書いています。

この記事を読むと、あなたの実務はこう変わります

  • 自社に影響があるかが、3分で判定できます
  • 技術側の追加(見落としやすい)まで押さえられます
  • 長納期案件の棚卸しの手順が手に入ります
  • 次の改正で同じ見落としを繰り返さない仕組みが作れます

この記事で扱うこと

この記事の後半では、実務への落とし込みに入ります。

  • 貨物の項番と省令条文の対応表★番号は一致しない(5項(20)→第4条第17号 等)。表で引くしかない理由
  • ★技術も同時に追加されている:外為令項番と省令条文の対応表。ペプチドだけ範囲が広い(「使用」まで/プログラムとその開発技術も対象)、他2つは「設計又は製造」でプログラム除外。この差が確認シートの作りに直結する
  • ★3分でできる自社影響チェック:品目ごとのチェック項目。3Dプリンタ用金属粉FPGAを部品として使っている完成品という、盲点になりやすい2つ
  • 施行日をまたいだ案件の扱い:該非判定は輸出等を行う時点の法令で行う。長納期案件の棚卸し4ステップ判定書に判定日がないと棚卸しができない
  • ★「政令レベル」という但し書きの意味:項番が増えないタイプの改正(省令レベルのスペック変更)は気づけない。新旧対照表で確認する
  • 確認シート・製品マスタ・取引審査・技術提供への反映項目
  • なぜ「重要・新興技術」なのか:バイオ/先端材料/半導体。レジーム合意の反映なので、米国EARでも近い動きがあるとみてよい
  • ★見落とさない仕組み:「施行日の1か月前にもう一度見る」をカレンダーに入れる

新しく規制対象になった3品目

新しく規制対象になった3品目
新しく規制対象になった3品目

上の図のとおり、ペプチドの合成を行うための装置(3の2項(2)10)高エントロピー合金の粉/耐火性金属・その合金の粉(5項(20))フィールドプログラマブルロジックデバイスを組み込んだモジュール、組立品、装置(7項(10の2))の3つです。

3の2項(生物)・5項(先端材料)・7項(エレクトロニクス)、バラバラの分野に1つずつ入っています。

だから見落とされます。 1つの分野の担当者だけが見ていても気づけません。


1. 貨物の項番と省令条文(対応表)

項番と省令条文の番号は一致しない
項番と省令条文の番号は一致しない

公表資料に載っている対応です。

上の図のように、3の2項(2)10 → 貨物等省令 第2条の2 第2項 第10号5項(20) → 第4条 第17号7項(10の2) → 第6条 第10の2号、という対応です。

★項番と省令条文の番号は一致しません。 5項(20)が省令では第4条第17号、7項(10の2)が第6条第10の2号、対応を覚えようとせず、必ず表で引いてください

2. 技術も同時に追加されています

技術も同時に追加されている
技術も同時に追加されている

ここを落とすと片手落ちです。貨物が追加されれば、対応する技術も追加されます。

上の図のように、ペプチド合成装置の技術は 外為令 3の2項(2)10/貨物等省令 第15条の3高エントロピー合金の粉などの技術は 5項(20)/第17条第1項第3号FPGA組込みモジュール等の技術は 7項(10の2)/第19条第1項第2号です。

★ペプチドだけ、技術の範囲が広いことに注目してください。

【ペプチド合成装置】
□ 設計・製造・使用のために設計したプログラム   ← ソフトそのもの
□ 設計・製造・使用に必要な技術
□ ★上記プログラムの設計・製造・使用に必要な技術 ← ソフトを作る技術まで

【高エントロピー合金/FPGA】
□ 設計又は製造に必要な技術(★プログラムを除く)
   → 「使用」が入らない/プログラムは対象外

ペプチドは「使用」まで入り、プログラムも対象。他の2つは「設計又は製造」までで、プログラムは除外。

この差は、確認シートの作りに直結します。 3品目を1行にまとめて書くと、必ず事故ります。

3. 自社に影響があるか:3分でできる確認

① ペプチド合成装置(3の2項(2)10)

□ ペプチド合成装置を製造・販売しているか
□ 装置に組み込むソフトウェアを開発しているか ★プログラムが対象
□ ソフトの開発ツール・ライブラリを提供しているか ★「プログラムの設計に必要な技術」
□ 受託合成サービスで装置を海外へ持ち出すことがあるか
□ 大学・研究機関へ納入し、技術指導をしているか

創薬・バイオ関連の装置メーカーとソフトハウスが直撃します。

② 高エントロピー合金の粉/耐火性金属・その合金の粉(5項(20))

□ 金属粉末を製造・販売しているか
□ 3Dプリンタ(積層造形)用の粉末材料を扱っているか ★
□ 耐火性金属(タングステン・モリブデン・タンタル・ニオブ等)の粉を扱っているか
□ 粉末冶金の受託をしているか
□ 合金設計のデータ・ノウハウを海外へ提供しているか

★3Dプリンタ用の金属粉が要注意です。近年、材料側から扱いが広がった領域です。

③ FPGA組込みモジュール等(7項(10の2))

□ FPGAを組み込んだ基板・モジュールを製造しているか
□ 装置の制御基板にFPGAを使っているか ★完成品でも該当しうる
□ FPGAボードを評価用・開発用に海外へ送ることがあるか
□ 回路設計データ(ネットリスト等)を海外へ提供しているか

★ここが最も広く効きます。 条文が「モジュール、組立品、装置」まで及ぶため、FPGAを部品として使っている完成品も視野に入ります。

「うちはFPGAメーカーではない」は理由になりません。使っている側も確認が要ります。

4. 施行日をまたいだ案件をどう扱うか

判定は「輸出等を行う時点」の法令で行う
判定は「輸出等を行う時点」の法令で行う

半年経っているとはいえ、長納期の案件では今も問題になります。

【判断の基準】
□ 該非判定は「輸出等を行う時点」の法令で行う
□ 契約日ではない
□ 見積提出日でもない

つまり

2025年に契約
    ↓
2026年3月に出荷    ← ★施行後なので新項番で判定
    ↓
旧判定のまま出すと、無許可輸出になりうる

長納期案件の棚卸しは、いま一度やる価値があります。

【棚卸しの手順】
① 2026年2月14日以降に出荷予定 or 出荷済みの案件を抽出
② そのうち、3品目に関係しうるものを絞る
   (ペプチド/金属粉/FPGA搭載品)
③ 該非判定の実施日を確認する
   → 2026年2月14日より前の判定なら、やり直す
④ 判定書を差し替え、記録を残す

③がポイントです。判定書に判定日が入っていないと、この棚卸しができません。判定日を書いていない会社は、ここで詰まります。

5. 「政令レベル」という但し書きの意味

「政令レベル」という但し書きの意味
「政令レベル」という但し書きの意味

公表資料には、こう書かれています。

対象品目の例(以下は政令レベルで新規追加となるもの

「政令レベル」=輸出令別表第一に新しい項番が立ったもの、という意味です。

つまり

【この3件】
政令に新しい項番が立った = 分かりやすい変更

【これ以外にもある】
★省令レベルでスペックだけ変わったもの
★既存項番の中で条件が追加・削除されたもの

省令レベルの変更は、項番が変わらないので気づきにくいのです。

【例のイメージ】
改正前:位置決め精度 0.006mm 未満のもの
改正後:位置決め精度 0.008mm 未満のもの
        ↑ 項番は同じ。でも該当範囲が広がっている

「新しい項番が増えていないから影響なし」と判断してはいけません。

自社の該当項番について、新旧対照表で条文レベルの差分を確認してください。METIは改正のたびに新旧対照表を公表しています。

6. 確認シートへの反映

3品目を扱う可能性がある会社向けの、具体的な作業です。

【該非判定書】
□ 判定に使った法令の版(施行日)を記入する欄があるか ★
□ 2026年2月14日以降の判定であることを明示

【製品マスタ】
□ 3品目に該当しうる製品にフラグを立てる
□ FPGA搭載の有無を部品表から拾えるようにする ★

【取引審査】
□ ペプチド合成装置 → 用途に「創薬・研究」とあっても
  需要者の確認は緩めない(生物兵器の懸念区分)
□ 金属粉 → 3Dプリンタ用途の需要者確認
□ FPGA → 最終製品の用途まで追う

【技術提供】
□ ★ペプチドは「使用に必要な技術」「プログラム」も対象
□ 装置の据付・保守・研修が技術提供にあたらないか
□ 他2品目は「設計又は製造」までで、プログラムは除外

★の3つが、今回いちばん抜けやすい点です。

7. なぜ「重要・新興技術」なのか

背景を押さえておくと、次に何が来るか読めます。

3品目を並べてみてください。

品目 分野
ペプチド合成装置 バイオ
高エントロピー合金の粉 先端材料・積層造形
FPGA組込みモジュール 半導体・再構成可能な演算

いずれも、近年の技術動向で急速に用途が広がった領域です。

そして、これらは国際輸出管理レジームの会合での合意を反映したものです。公表資料にもこうあります。

国際輸出管理レジーム会合の合意等を踏まえ、輸出貿易管理令・貨物等省令等の改正を公布しました

つまり

レジーム会合で合意
    ↓
参加国が自国の法令に反映
    ↓
★同じ品目が、他国でも同時期に規制対象になる

米国EARでも、近い時期に同様の品目が動いている可能性が高いということです。日米両方を見ている会社は、EAR側の改正も併せて確認してください。

8. 次に備える:見落とさない仕組み

見落とさないための仕組みのつくり方
見落とさないための仕組みのつくり方

半年見落としていた、を繰り返さないための実務です。

【監視する場所】
□ METI「法令改正情報」
□ ★METI「施行日前の許可申請の受付について」
   → 新規追加品目が、施行前にここに出る
□ METI「新旧対照表」(省令レベルの変更はここでしか分からない)

【頻度】
□ 通常は月1回
□ 公布があったら、施行日をカレンダーに入れる
□ ★施行日の1か月前に、もう一度見る

★施行日の1か月前のリマインダー。これが効きます。

公布時に読んで「まだ先だ」と思い、そのまま忘れる。今回の3品目も、その形で見落とされているはずです。

まとめ

  • 2026年2月14日に施行済み。公布は2025年11月14日、事前受付は12月15日から
  • 新規追加は政令レベルで貨物3品目ペプチド合成装置(3の2項(2)10)/高エントロピー合金の粉・耐火性金属の粉(5項(20))/FPGA組込みモジュール等(7項(10の2))
  • 3の2項・5項・7項とバラバラの分野に1つずつ。1分野だけ見ていると気づけない
  • ★技術も同時に追加されている。項番と省令条文の番号は一致しないので表で引く
  • ★ペプチドだけ範囲が広い:「使用」まで入り、プログラムとその開発技術も対象。他2つは「設計又は製造」でプログラム除外
  • FPGAが最も広く効く。条文がモジュール・組立品・装置まで及ぶので、使っている側も対象になりうる
  • 該非判定は輸出等を行う時点の法令で行う。長納期案件の棚卸し
  • 判定書に判定日がないと棚卸しができない
  • 「政令レベル」=項番が増えたもの省令レベルのスペック変更は項番が変わらず気づきにくい。新旧対照表で確認する
  • 3品目はバイオ・先端材料・半導体レジーム合意の反映なので、米国EARでも近い動きがあるとみてよい
  • 仕組みとして「施行日の1か月前にもう一度見る」をカレンダーに入れる

さて、自社の2026年2月14日以降の出荷案件に、判定日が施行前のものは残っていないでしょうか。

みなとくん船長、施行のときは静か、というのは実感があります
あんぼう船長公布は事件じゃが、施行は日付が来るだけじゃからな。カレンダーに入れておくしかないんじゃ
---

※ 項番・省令条文は経済産業省「施行日前の許可申請の受付について」(最終更新2025年11月14日)掲載の表によります。本記事は改正の所在を示すもので、個別品目の該非を判定するものではありません。 実際の判定は必ず 輸出令・貨物等省令・マトリクス表 の最新版と、必要に応じて経済産業省への相談でご確認ください。

改正を見落とさないために(無料)

安全保障貿易の制度は、たびたび改正されます。安貿ナビでは、経済産業省・CISTEC・米国EARの新着を確認し、実務への影響をメールでお届けしています。

無料で登録する

社内の輸出管理教育をご検討の企業のご担当者さまには、あわせて資料をお送りしています。