2025年10月9日、補完的輸出規制が大きく見直されました。すでに施行済みです。

社内の確認シートを更新していない場合、確認すべき項目が抜けたまま運用している可能性があります。

見分け方は簡単です。

確認シートに「HSコード」を書く欄があるかどうか。

無ければ、旧版のままです。

幸い、経済産業省が改正対応の客観要件確認シート(参考)をWord形式で公表しています。冒頭には「あくまでも参考例ですので、社内規程等を踏まえ、修正等してご使用ください」とあります。ゼロから設計する必要はありません。

みなとくん船長、うちのシートにHSコードの欄は……無いです
あんぼう船長ならば作り替えどきじゃな。幸い、参考様式が公表されておる
この記事は、現職で輸出管理・貿易実務に携わっている方に向けて書いています。

この記事を読むと、あなたのシートはこう変わります

  • 現行シートの不足項目を、チェックリストで洗い出せるようになります
  • HSコードで足切りできるしくみが分かり、確認作業が効率化します
  • 大量破壊兵器等と通常兵器で2系統に分かれた構造を理解できます
  • 判定の向きが逆になっている箇所(取り違えると結論が反転する)を把握できます

この記事で扱うこと

この記事の後半では、シートの構造を分解して作り替え手順に落とします。

  • 参考様式の全体構造:3ブロック構成と、責任者が2名分(該非確認責任者・統括責任者)用意されている意味
  • 【1】案件概要の新項目HSコードは通常は上二桁、特定品目なら四桁・六桁という桁数の使い分け
  • 【2】品目・インフォーム確認の3ステップ:該非判断 → インフォーム/グループA → HSコードによる16項中欄の確認
  • HSコードで足切りできる範囲:16項中欄に対応する関税定率法別表の具体的な類の範囲。ここに入らなければ確認終了
  • 【3】用途・需要者確認の2系統:大量破壊兵器等(3-1用途/3-2需要者/3-3ガイドライン)と通常兵器
  • ★3-3だけ判定の向きが逆:「いいえ」が懸念のサイン。作り替え時にここを変えてはいけない理由
  • 通常兵器の新設パターン:「一般国+特定品目」という2025年改正の核心
  • 作り替えの6ステップと、不足項目チェックリスト(★印付き)
  • フロー図も一緒に差し替える:シートは「何を」、フロー図は「どの順番で」

参考様式が公表されています

自社の確認シートは最新版?
自社の確認シートは最新版?

経済産業省は、改正に対応した客観要件確認シート(参考)をWord形式で公表しています。

冒頭にこう書かれています。

※ あくまでも参考例ですので、社内規程等を踏まえ、修正等してご使用ください。

そのまま使ってもよいし、自社仕様に直してもよいという位置づけです。ゼロから設計する必要はありません。


1. 参考様式の全体構造

参考様式は3つのブロック
参考様式は3つのブロック

参考様式は3つのブロックでできています。

【冒頭】確認日/該非確認責任者/統括責任者
   ↓
【1】輸出案件の概要
   ↓
【2】品目・インフォーム等 確認リスト
   ↓
【3】用途・需要者等 確認リスト

責任者の欄が2名分(該非確認責任者・統括責任者)用意されているのが特徴です。1人で完結させない設計になっています。

2. 【1】輸出案件の概要:ここに新項目が入りました

HSコードは何桁書くのか
HSコードは何桁書くのか

記載する項目はこうです。

項目 備考
仕向国
貨物・技術名
HSコード(上二桁) ★新設
特定品目の場合は四桁又は六桁 ★新設
輸入者
最終需要者
所在地(国名)
代表者
事業内容
最終用途

★が付いた2項目が、今回の改正で重要になった部分です。

注目すべきは桁数の指定です。

  • 通常は上二桁(HSコードの「類」レベル)
  • 特定品目の場合は四桁または六桁(より細かいレベル)

「特定品目に当たりそうなら、細かい桁まで書く」

3. 【2】品目・インフォーム等 確認リスト:3ステップ

【2】品目の確認は3ステップ
【2】品目の確認は3ステップ

このブロックは3つの問いで構成されています。

① 該非判断の確認

輸出令別表第1/外為令別表の1〜15項のいずれかに該当するか

はい → リスト規制の話になるので、そちらの手続きへ いいえ → ②へ進む

② インフォーム・仕向地の確認

経済産業省からインフォームを受けたか

はい → 許可申請が必要 いいえ → 次の問いへ

仕向国は輸出令別表第3の国(グループA)

はい許可申請不要 いいえ → ③へ進む

様式には、グループA27か国の国名が注記として列挙されています。手元で確認できる作りです。

③ 品目の確認:ここがHSコードの出番

HSコードから、当該貨物・技術が輸出令別表第1/外為令別表の16項の中欄に該当しないことが明らかか

はい許可申請不要 いいえ → 【3】へ進む

そして注記に、16項中欄に対応するHSの範囲が示されています。

関税定率法別表の第25類から第40類まで、第54類から第59類まで、第63類、第68類から第93類まで、第95類に該当する貨物

この範囲に入らないHSコードなら、そこで確認は終わります。 逆に入る場合は、用途・需要者の確認へ進むことになります。

「HSコードで足切りができるようになった」

これは実務上、大きな効率化です。通関のために必ず調べるHSコードが、そのまま判断に使えるからです。

4. 【3】用途・需要者等 確認リスト:2系統に分かれます

【3】は1つの確認で足りる?
【3】は1つの確認で足りる?

ここが改正で構造が変わった部分です。大量破壊兵器等通常兵器で、別々に確認します。

① 大量破壊兵器等 補完規制

3つの下位リストを順に確認します。上の図のように、3-1が用途確認リスト、3-2が需要者確認リスト、3-3が明らかガイドラインです。

3-3だけ判定の向きが逆です。用途・需要者は「はい」が懸念のサイン、ガイドラインは「いいえ」が懸念のサインになります。

ここを取り違えると結論が反転します。 シートを自社仕様に作り替えるときは、この向きを変えないでください。

② 通常兵器 補完規制:2025年改正の核心

問いはこうです。

仕向国が輸出令別表第3の2の国、または一般国貨物が特定品目、もしくは技術が特定品目の技術である場合に限る)か

分解すると、通常兵器の確認が必要になるのは2パターンです。

パターンA:仕向国が別表第三の二の国(国連武器禁輸国・地域)
   → 従来から対象

パターンB:仕向国が一般国 かつ 貨物・技術が特定品目
   → ★2025年10月9日から追加されたパターン

パターンBが新設分です。ここが旧版の確認シートには存在しません。

5. 作り替えの手順

自社のシートを更新する手順を整理します。

① 公表されている参考様式(Word)を入手する
        ↓
② 自社の現行シートと項目を突き合わせる
        ↓
③ 不足項目を洗い出す(下のチェックリスト参照)
        ↓
④ 自社の運用に合わせて調整する
   (社内の承認フロー・部門名などを反映)
        ↓
⑤ 判定担当者へ変更点を周知する ★
        ↓
⑥ 運用開始。旧シートは使用停止にする

⑤を飛ばさないでください。 様式だけ変えても、担当者が変更点を理解していなければ、空欄のまま運用されます。

6. 不足項目のチェックリスト

現行シートに次があるか確認してください。

【1】案件概要
 □ HSコード欄がある ★
 □ 特定品目の場合に四桁・六桁を書く注記がある ★
 □ 最終需要者の「事業内容」欄がある
 □ 最終用途欄がある

【2】品目・インフォーム確認
 □ 1〜15項該当の確認がある
 □ インフォームの確認がある
 □ グループA(別表第三)の判定がある
 □ 国名の一覧が注記されている
 □ HSコードによる16項中欄の確認がある ★

【3】用途・需要者確認
 □ 大量破壊兵器等と通常兵器が分かれている ★
 □ 3-1用途/3-2需要者/3-3ガイドラインの3段構成
 □ 3-3だけ判定の向きが逆になっている
 □ 通常兵器で「一般国+特定品目」のパターンがある ★

【責任者】
 □ 該非確認責任者の欄がある
 □ 統括責任者の欄がある
 □ 確認日の欄がある

★が2025年改正に直結する項目です。ここが無ければ優先して追加してください。

7. フロー図も差し替えます

確認シートとあわせて、手続きフロー図も公表されています(令和7年10月9日施行対応)。

シートは「何を確認するか」、フロー図は「どういう順番で判断するか」を示します。両方を差し替えて、はじめて対応完了です。

社内マニュアルにフロー図を貼っている場合、そちらも忘れずに更新してください。

まとめ

  • 確認シートにHSコード欄が無ければ、旧版のまま
  • 参考様式はWord形式で公表されている。「修正等してご使用ください」という位置づけ
  • 構造は【1】案件概要 →【2】品目・インフォーム →【3】用途・需要者の3ブロック
  • HSコードは通常は上二桁、特定品目なら四桁・六桁
  • 16項中欄のHS範囲は第25〜40類、第54〜59類、第63類、第68〜93類、第95類。この範囲外なら足切りできる
  • 【3】は大量破壊兵器等通常兵器の2系統
  • 3-3の明らかガイドラインだけ判定の向きが逆(「いいえ」が懸念のサイン)
  • 通常兵器の新設分は「一般国+特定品目」のパターン
  • フロー図も一緒に差し替える

さて、自社の確認シートにHSコード欄はありましたか。

無ければ、今日から作り替えを始めてください。すでに施行済みの改正です。

次回は、そのシートを実際に回す手順、客観要件をフロー図に沿って1件ずつ潰していく方法を扱います。

みなとくん船長、様式が公表されているなら、作り替えは思ったより早く終わりそうです
あんぼう船長そうじゃ。ゼロから作るより、公表されたものを土台にするほうが確かでな。まず入手するところからじゃ
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※ 項目構成は経済産業省「客観要件確認シート(参考)」(令和7年10月9日施行対応)によります。様式そのものは掲載していません。 実際の使用にあたっては、経済産業省が公表している原本を入手してください。制度は今後も改正されることがあります。

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