輸出管理の実務は、ほとんどが2の項〜16の項の話です。1の項(武器)だけは、扱いが違います。

【積替規制】     1の項 → 全地域・無条件で許可
【仲介貿易取引】 1の項 → 船積地域・仕向地を問わず許可
【役務通達】     ★1の項における「使用」は範囲の取り方が違う

なぜ1の項だけ違うのか。 その背景に、防衛装備移転三原則があります。

そして、「防衛装備」の定義には注意すべき構造があります。

「防衛装備」「武器」(=輸出令別表第1の1の項に掲げるもののうち、軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの)及び「武器技術」

1の項に該当する = すべて防衛装備、ではありません。

みなとくん船長、うちは武器なんて作っていませんが
あんぼう船長そうじゃろうな。じゃがな、1の項に触れるかもしれん場面はあるんじゃ
この記事は、現職で輸出管理・貿易実務に携わっている方に向けて書いています。

この記事を読むと、あなたはこう変わります

  • 1の項が別扱いになる理由が腹落ちします
  • 触れたときにどう動くかが決まります
  • 自社で判断しないことを決められます
  • 該非判定フローに入れるべき分岐が分かります

この記事で扱うこと

この記事の後半では、実際に動ける形にします。

  • ★2つの層がある:外為法の輸出許可(第1層)と防衛装備移転三原則(第2層)。外為法の許可を取れば終わりではない
  • ★特に慎重な検討を要する重要な案件は、国家安全保障会議における審議が必要
  • 三原則の中身(平成26年4月1日閣議決定):★3つすべてを満たした場合に限り認められ得る
  • ★通常の輸出管理との構造比較表:通常は「懸念がなければ出せる」、三原則は「認め得る場合に限り出せる」。発想が逆
  • 実務者が出会う3つの場面:1の項に該当しうる品目/官公庁・防衛関連の受注/スポーツ用の銃器等
  • ★やること・やらないことの線引き自社で防衛装備該当性を最終判断しない
  • ★手順に入れる分岐:1の項に該当したら通常フローから外して別ルートへ

「防衛装備」とは何か

1の項なら、すべて防衛装備?
1の項なら、すべて防衛装備?

まず定義から。経済産業省の説明会参考資料に、こう書かれています。

「防衛装備」「武器」(=輸出令別表第1の1の項に掲げるもののうち、軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの) 及び 「武器技術」(=武器の設計、製造又は使用に係る技術

★注意すべき構造があります。

輸出令別表第1の1の項 に掲げるもの
        ↓ そのうち
軍隊が使用するもの
        ↓ であって
★直接戦闘の用に供されるもの
        ↓
= 「武器」=防衛装備

1の項に該当する = すべて防衛装備、ではありません。

「軍隊が使用」かつ「直接戦闘の用に供される」という絞りが入っています。


1. 実務者がまず押さえること:2つの層がある

許可を取れば終わり、ではない
許可を取れば終わり、ではない

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい構造です。

【第1層】外為法の輸出許可
  1の項に該当する貨物・技術は
  → 全地域で経済産業大臣の許可が必要

【第2層】防衛装備移転三原則
  そのうち「防衛装備」に当たるものは
  → ★政府の判断の枠組みが別にかかる

外為法の許可を取れば終わり、ではない場合があります。

そして、資料にはこう書かれています。

輸出しようとする貨物又は提供しようとする技術が「防衛装備」に該当し、特に慎重な検討を要する重要な案件については、防衛装備移転三原則に基づく国家安全保障会議における審議が必要

★国家安全保障会議(NSC)の審議、ここまで上がる案件がある、ということです。

実務者の立場で重要なのは、「そういう領域がある」と知っていることです。自社で判断できる話ではありません。

2. 三原則の中身

三原則は、すべて満たして初めて
三原則は、すべて満たして初めて

平成26年4月1日 閣議決定によるものです。

以下の3つの原則をすべて満たした場合に限り、輸出が認められ得る。

★「すべて満たした場合に限り」、3つのうち1つでも欠ければ、認められません。

原則1:「移転が禁止される場合」に該当しない

□ 条約や国連安保理の決議に基づく義務に違反しない場合
□ ★「紛争当事国」への移転ではない場合

まず、禁止される場合に当たらないこと。

原則2:「移転を認め得る場合」に該当する

□ 平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合
□ ★我が国の安全保障に資する場合
   (国際共同開発・生産、自衛隊の活動に係る輸出)

次に、認め得る類型に当たること。

★「該当しなければ認められない」という構造です。「禁止されていないから自由」ではありません。

原則3:移転後の適正管理が確保されている

□ ★事前同意なき目的外使用の禁止
□ ★事前同意なき第三国移転の禁止

渡したあとの管理まで含めて、初めて認められます。

3. 3原則の構造を、通常の輸出管理と比べる

懸念がなければ、出せる?
懸念がなければ、出せる?

実務者の感覚に合わせて整理すると、上の図のようになります。基本の姿勢は、通常の輸出管理が原則自由、規制は例外なのに対し、三原則は★原則認めない、認め得る場合に限る。判断するのも輸出者ではなく政府で、重要案件は大臣の許可ではなく★国家安全保障会議の審議に上がります。移転後も輸出者の管理を離れず、★事前同意なき目的外使用・第三国移転が禁止されます。

発想が逆向きです。

通常の輸出管理は「懸念がなければ出せる」。三原則は「認め得る場合に限り出せる」。

この違いを理解していないと、社内での説明がずれます。

4. どういう場面で実務者が出会うか

「うちは武器を作っていない」。それでも、接点が生じる場面があります。

① 1の項に該当しうる品目を扱っている

1の項は「武器」ですが、輸出令別表第1の1の項に掲げるものの範囲は、意外に広いことがあります。

【1の項に関係しうる例】
□ 銃砲・その部分品
□ 軍用の細菌製剤・化学製剤
□ 軍用の探照灯
□ 火薬類・爆薬
□ 軍用車両の部分品
□ 防衛装備の部分品・付属品

★「軍隊が使用し、直接戦闘の用に供される」かどうかで防衛装備の該当が決まりますが、1の項該当かどうかは、まず該非判定の問題です。

② 官公庁・防衛関連の受注に関わった

□ 防衛省向けの受注がある
□ 国際共同開発・生産のプロジェクトに参加している
□ 自衛隊の活動に関連する物資・役務

原則2に「国際共同開発・生産、自衛隊の活動に係る輸出」が明記されています。この領域は、三原則の枠組みの中にあります。

③ スポーツ用の銃器等

2025年11月/2026年2月の改正で、1の項に係る合理化が行われています。

□ 国内スポーツ競技大会参加後の輸出
□ 海外スポーツ競技大会参加時の輸出
□ 政府機関が行う一時的な持ち出し
□ 個人使用のための個別包装された貨物の持ち出し

射撃競技の用具は1の項に触れうるため、こうした特例が整備されています(改正タイムラインと将来性)。

5. 実務者がやること・やらないこと

やること・やらないこと
やること・やらないこと

はっきり線を引きます。

【やること】
□ ★該非判定で1の項に触れないかを確認する
□ 触れる可能性があれば、上長・経営に上げる
□ ★早い段階で経済産業省に相談する
□ 記録を残す

【やらないこと】
□ ★自社で「防衛装備に当たるか」を最終判断する
□ 三原則の当てはめを自社で結論づける
□ 「たぶん大丈夫」で進める

★1の項に触れた時点で、通常の該非判定の枠を超えます。

この領域は、担当者が一人で背負うものではありません。

6. 記録に残すこと

□ 1の項該当性の判定結果と、その根拠
□ 「軍隊が使用」「直接戦闘の用に供される」の検討内容
□ 相談した窓口・日付・回答の要旨
□ 社内でどこまで上げたか(上長・経営)
□ 参照した法令・通達の版

★「相談した記録」が特に重要です。この領域は、自社判断で進めたこと自体が問題になりえます。

7. なぜこの記事を書くか

この記事は、判断の方法を教える記事ではありません。

三原則の当てはめは政府が行うもので、実務者が代わりに結論を出すものではないからです。

この記事の目的は1つです。

「1の項に触れたら、いつもと違う」と気づけるようにすること。

【気づけないと起きること】
1の項に該当する部分品を、汎用品と同じ手順で処理
        ↓
全地域で許可が必要なのに、
グループA向けだから不要と判断
        ↓
★無許可輸出

積替規制でも仲介貿易でも、1の項だけ「全地域・無条件」でした。

「1の項は別」。この1点を、社内の手順に埋め込んでください。

【手順に入れる分岐】
該非判定の結果、1の項に該当 or 該当の可能性
        ↓
★通常フローから外し、別ルートへ
   □ 上長・経営への報告
   □ 経済産業省への相談
   □ 三原則の枠組みに入る可能性の検討

まとめ

  • 1の項(武器)は、輸出管理のあちこちで別扱いになる。その背景に防衛装備移転三原則がある
  • 「防衛装備」=「武器」+「武器技術」武器=1の項に掲げるもののうち、★軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの
  • 1の項該当=すべて防衛装備、ではない
  • ★2つの層がある:外為法の輸出許可(第1層)と、防衛装備移転三原則(第2層)
  • 特に慎重な検討を要する重要な案件は、★国家安全保障会議における審議が必要
  • 三原則は平成26年4月1日 閣議決定★3つすべてを満たした場合に限り輸出が認められ得る
  • 原則1=移転が禁止される場合に該当しない(条約・国連安保理決議/紛争当事国
  • 原則2=移転を認め得る場合に該当する(平和貢献・国際協力/我が国の安全保障=国際共同開発・生産、自衛隊の活動)
  • 原則3=移転後の適正管理(事前同意なき目的外使用・第三国移転の禁止
  • ★通常の輸出管理は「懸念がなければ出せる」、三原則は「認め得る場合に限り出せる」。発想が逆
  • 実務者がやること=1の項に触れないか確認し、触れたら上に上げ、早く相談する
  • 実務者がやらないこと=防衛装備該当性を自社で最終判断する
  • ★この記事の目的は「1の項に触れたら、いつもと違う」と気づけるようにすること

さて、自社の該非判定フローに、「1の項に該当したら別ルート」という分岐はあるでしょうか。

みなとくん船長、判断しないことを決めておくのも大事なんですね
あんぼう船長そうじゃ。背負わんでよいものを背負わん。それも実務の腕でな
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※ 三原則の内容・「防衛装備」の定義は経済産業省 説明会参考資料(令和7年度10月版)によります。三原則は平成26年4月1日閣議決定制度・運用は変更されることがあります。 最新の内容は 経済産業省 安全保障貿易管理 および関係省庁の公表情報でご確認ください。本記事は制度の所在と実務上の注意点を整理したもので、個別案件の可否や防衛装備該当性を判断するものではありません。 該当の可能性がある場合は、必ず経済産業省へご相談ください。

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