概要
輸出管理の違反は罰則が重い。そう聞いたことはあっても、具体的に何が起きるかは漠然としていませんか。
数字を並べる前に、まず形を押さえてください。罰則は二本立てです。

刑事罰は懲役・罰金で、人と会社が罰せられます。行政制裁は輸出の禁止で、そもそも輸出ができなくなります。
実務で怖いのは、じつは後者かもしれません。罰金を払って終わり、にはならないからです。


- 罰則が「刑事罰」と「行政制裁」の二本立てであること
- 実際にはどんな処分が多いのか
- 「知らなかった」が通らない理由
一本目|刑事罰
外為法には罰則の規定があります。2026年6月5日施行版では、次の条文に置かれています。

第69条の7が無許可輸出・無許可の技術提供(48条1項・25条1項ほか)で、7年以下の拘禁刑もしくは2,000万円以下の罰金。目的物価格の5倍が2,000万円を超えるときは価格の5倍以下です。併科もあります。
同じ第69条の7でも、核兵器等(核・化学・生物兵器、政令指定のロケット・無人航空機)に関わる特に重い違反は、10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金(または価格の5倍)。一部は未遂も処罰されます。
第69条の8は補完的輸出規制(キャッチオール)等の命令違反と無承認輸出で、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金(または価格の5倍以下)です。

注目したいのは「価格の5倍」という考え方です。
罰金には上限額が定められていますが、輸出しようとした物の価格の5倍がその上限を超える場合には、価格の5倍まで科すことができます。つまり、高額な取引ほど罰金も跳ね上がるということです。
「取引が大きいほど、罰金も大きくなる設計」。
条番号に注意してください
ここで、実務上とても大事な注意があります。
従来の解説書やテキストの多くは、主要な罰則を「第69条の6」として紹介しています。 ところが2026年6月5日施行版では、第69条の7・第69条の8に置かれています。
改正によって条番号が動いたためです。ちなみに現在の第69条の6は、罰則ではなく命令の経過措置に関する規定になっています。
古い資料の条番号をそのまま覚えると、間違った条文を指すことになります。 条番号を引用するときは、必ずe-Gov法令検索で最新版を確認してください。
二本目|行政制裁
こちらは刑罰ではありません。行政処分です。
外為法第53条に規定があります。無許可で輸出をした者に対して、経済産業大臣が
3年以内の期間を限り、輸出または技術の提供を禁止することができる
つまり、最大3年間、輸出ができなくなるということです。役員等に対する禁止措置の規定もあります。
罰金は一度払えば終わります。しかし輸出禁止は違います。その期間、輸出事業そのものが止まります。
輸出を柱にしている会社にとって、これは事業の継続に直結します。取引先への影響も避けられません。
「刑事罰は過去への罰、行政制裁は未来を止める処分」。
実際にはどんな処分が多いのか
ここまで読むと不安になるかもしれません。実際のデータを見てみましょう。
経済産業省が公表している2024年度の違反事案の分析結果では、処分の内訳はこうなっていました。
報告書(軽微)が69%、経緯書+口頭注意が26%、経緯書+文書厳重注意が5%。警告と行政制裁は0%です。
行政制裁と警告の実績は0%でした。多くは「報告書の提出」で処理されています。
これは、実際の違反の多くが悪意のないものだからです。同じ資料によれば、故意による違反は2%にとどまります。
それでも軽く見てはいけない理由

では安心してよいのかというと、そうではありません。理由が3つあります。
① 制裁の枠組みは存在している
使われていないことと、無いことは違います。悪質と判断されれば、行政制裁は実際に発動しうる仕組みです。
② 処分が重くなる方向に動いている
3年分を並べると、いちばん軽い「報告書」で済む割合が84% → 79% → 69%と下がり、その分「経緯書+口頭注意」が14% → 26%へ増えています。
③ 処分だけが損失ではない
違反が判明すれば、原因究明と再発防止策の策定を求められます。過去の取引にさかのぼって確認する必要も出てきます。その作業にかかる時間と人手は、処分の重さとは関係なく発生します。
「知らなかった」は通りません
もう一つ、押さえておきたい事実があります。
2024年度の違反原因の分類には、「外為法の認識欠如・知識不足」が9%として、はっきり計上されています。
知らなかったことは、違反しなかったことにはなりません。むしろ違反の原因として数えられています。
まとめ
- 罰則は刑事罰と行政制裁の二本立て
- 刑事罰は第69条の7(無許可輸出等・7年以下/2,000万円以下、核兵器等関連は10年以下/3,000万円以下)と第69条の8(補完的輸出規制違反等・5年以下/1,000万円以下)※2026-06-05施行版
- 罰金は目的物価格の5倍まで科されうる。取引が大きいほど重くなる
- 行政制裁は第53条。最大3年間、輸出ができなくなる
- ⚠️ 条番号は改正で動く。「69条の6」で覚えている場合は要注意
- 実際の処分は69%が報告書で、行政制裁の実績は0%。ただし軽い処分の割合は年々下がっている
- 「知らなかった」も違反原因として計上される(9%)
罰則は、覚えるべきものというより、なぜ手順を守るのかの理由として知っておくものだと思います。


- 次に読む:罰則の条番号が変わっています — この記事で触れた条番号のずれを、正面から
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※ 条番号および法定刑は、外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)2026年6月5日施行版によります。改正により条番号が変わることがあるため、引用時は必ずe-Gov法令検索で最新版をご確認ください。処分の統計は経済産業省「外為法違反事案の分析結果について(2024年度)」(2025年12月公表)ほかによります。
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