概要
輸出管理の資料を開いて、こう思いませんでしたか。
「一文読むたびに、知らない言葉で止まる」
該非判定。客観要件。需要者要件。役務。特定類型。
難しいのではなく、単に知らないだけです。そして、覚えるべき言葉は思ったより少ない。
経済産業省は「安全保障貿易管理ガイダンス[入門編]」の別添3として「輸出管理用語集」を公開しています。収録は27語。これが、この分野の共通語です。
この記事では、公式の定義と、あんぼう船長の言い換えを並べます。


- 公的資料を読むために必要な27語の意味
- まず押さえるべき8語と、分野ごとの残り19語
- つまずきやすい3組の見分け方
まず、この8語だけ
いきなり27語は多いので、最初に効く8語から。
① 該非判定(がいひはんてい)
公式:輸出しようとする貨物又は提供しようとする技術がリスト規制に該当するか否かを判定すること。
言い換え:その貨物(技術)が、規制リストに載っているかどうかを調べること。
「該」=あてはまる、「非」=あてはまらない。どちらかを判定するから「該非」判定です。
この仕事の中心にある作業です。
② リスト規制
公式:国際的な合意を踏まえ、武器及び大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれの高いもの、具体的には輸出令・別表第1の1〜15項に該当する貨物又は外為令・別表第1〜15項に該当する技術を輸出等しようとする場合、経済産業大臣の許可が必要となる制度。
言い換え:リストに載っている貨物は、どこへ送るにも許可が要るという制度。
行き先を問いません。 アメリカでも、韓国でも、許可が要ります。
③ キャッチオール規制(=補完的輸出規制)
公式:貨物は輸出令別表第1、技術は外為令別表の各々16の項に規定されているが、リスト規制と異なり一定の要件(客観要件、インフォーム要件)を満たした場合に、許可(申請)が必要となる規制
言い換え:リストに載っていない貨物でも、使い道や相手が怪しければ許可が要るという、二段目の網。
⚠️ 呼び方に注意。 2025年10月9日の見直し以降、経済産業省は「補完的輸出規制(キャッチオール規制)」と併記しています。どちらの言葉も使われます。 検索するときは両方で当たってください。
④ 客観要件(きゃっかんようけん)
公式:用途要件と需要者要件のことをいい、輸出等の許可が必要となる要件。
言い換え:「使い道」と「相手」の2つのチェック項目をまとめた呼び名。
⑤ 用途要件(ようとようけん)
公式:輸出される貨物又は提供される技術が、大量破壊兵器等又は通常兵器の開発等に用いられるおそれがある場合。
言い換え:何に使われるかが怪しい、という条件。
⑥ 需要者要件(じゅようしゃようけん)
公式:需要者及び技術を利用する者が大量破壊兵器等の開発等を行っている又は行っていた場合。また、外国ユーザーリストに掲載されている場合。
言い換え:誰が使うかが怪しい、という条件。
「行っていた」(過去形)が入っているのがポイントです。今はやめていても対象になりえます。
⑦ インフォーム
公式:輸出しようとする貨物又は提供しようとする技術について、大量破壊兵器等や通常兵器の開発等に使用されるおそれがあるとして経済産業大臣から許可を取るように通知を受けること。
言い換え:国から「これは許可を取ってください」と個別に言われること。
自分で判定した結果とは無関係に、通知が来たら許可が要ります。
⑧ 役務(えきむ)
公式:本ガイダンスの範囲であるリスト規制、キャッチオール規制において「技術」を指し、貨物(物)の設計、製造または使用に必要な特定の情報。プログラムやソフトウエアも含む。
言い換え:この分野で「役務」と書いてあったら、ほぼ「技術」のこと。
サービス業の「役務」とは違います。設計・製造・使用に必要な情報で、ソフトウェアも入ります。
「役務通達」「役務取引」といった言葉に出てきます。
ここまでの8語で、制度の説明資料はかなり読めるようになります。
三本の矢まわりの用語
⑨ 取引審査
公式:輸出しようとする貨物又は提供しようとする技術の用途、需要者等の事業内容から、安全保障上懸念がないことを確認し、取引を行うか否かを判断すること。
言い換え:使い道と相手を調べて、この取引をやるかどうか決めること。
⑩ 出荷管理
公式:法令で規制されている貨物や技術の誤出荷等を防止するため、輸出や提供を行う前に、同一性等の確認を行うこと。
言い換え:出す直前に「審査したものと同じか」を見る、最後の関門。
該非判定 → 取引審査 → 出荷管理が「三本の矢」です。
⑪ 需要者等(じゅようしゃとう)
公式:技術取引の相手方若しくは技術を利用する者若しくは貨物の輸入者若しくは需要者又はこれらの代理人。
言い換え:貨物や技術が最終的に届く先の人・会社(代理人も含む)。
「輸入者=需要者」とは限りません。買った会社と、実際に使う会社が違うことがあるからです。
「誰に渡すか」まわりの用語
⑫ みなし輸出管理
公式:国内における技術の提供であって、居住者から非居住者に対する規制技術の提供を目的とする取引の管理のこと。
言い換え:日本国内でのやりとりでも、相手が外国の人なら輸出とみなすという考え方。
⑬ 特定類型
公式:居住者への技術の提供であっても、当該居住者が非居住者へ技術を提供する取引と事実上同一と考えられるほどに当該非居住者から強い影響を受けている状態。なお、特定取引の需要者(技術を利用する者)は、当該非居住者となる。
言い換え:日本に住んでいる人でも、外国政府や外国企業の強い影響下にあれば、外国の人と同じ扱いにするという区分。
⑭ 特定取引
公式:特定類型に該当する居住者に対して技術を提供する取引。みなし輸出管理の対象。
言い換え:⑬に当たる人へ技術を渡す取引のこと。
⑮ 外国ユーザーリスト
公式:経済産業省が①大量破壊兵器等の開発等への関与が懸念される企業・組織又は②通常兵器の開発等、取引状況等の確認を要する外国団体の情報を掲載し公表しているリスト。改定されるので、最新のものを確認する必要がある。
言い換え:国が公表している、要注意先の一覧。
「改定されるので最新のものを」と定義文に書かれています。去年のリストで照合していた、は事故です。
⑯ 軍若しくは軍関係機関又はこれらに類する機関
公式:軍隊又は国防、治安の維持若しくは安全保障等を目的とする機関(警察及び情報機関を含む。)及びこれらの機関に属する機関をいう。
言い換え:軍だけでなく、警察や情報機関も含む。
「軍じゃないから大丈夫」と思いがちなところです。
制度・手続きまわりの用語
⑰ 特例(とくれい)
公式:リスト規制該当貨物又は技術の輸出等の許可を必要としないで、輸出等をすることができる例外規定。輸出の特例と技術の特例が規定されている。
言い換え:該当していても、条件を満たせば許可なしで出せる例外。
少額特例、無償特例などがあります。
⑱ 包括許可制度
公式:本来は個々の契約や輸出等に関して個別に経済産業省の審査を経て許可されるが、輸出者自身がこうした審査機能を自主管理の下で担える場合には、個別許可の申請を行うことなく、一定の範囲について包括的に許可を受けることで、輸出等を行うことが可能となる制度。
言い換え:1件ずつ申請する代わりに、まとめて許可をもらっておく制度。
「自主管理の下で担える場合には」が条件です。体制が要ります。
⑲ 輸出者等遵守基準
公式:業として輸出等を行う者が、遵守すべき基準。すべての輸出者等が遵守すべき事項と、リスト規制貨物・技術を扱う輸出者等が遵守すべき事項がある。
言い換え:繰り返し輸出する会社が守るべき決まり。2段階になっている。
⑳ CP
公式:Compliance Program(コンプライアンス・プログラム)の略称。輸出管理内部規程を指すことが多い。
言い換え:社内の輸出管理ルールブック。
㉑ 報告告示
公式:官民対話スキームでの報告を規定する経済産業省告示「貿易関係貿易外取引等に関する省令第10条第3項の規定に基づき、重要管理対象技術を提供することを目的とする取引を行おうとする者に報告を求める事項」のこと。
言い換え:重要な技術を渡すとき、あらかじめ国に報告する仕組みの根拠。
㉒ NACCS(ナックス)
公式:貿易関連の行政手続きと民間業務をオンラインで行うシステムを指す。輸出許可申請等の電子申請もこのシステムで行う。
言い換え:貿易の手続きを行うオンラインシステム。許可申請もここから。
対象と地域の用語
㉓ 大量破壊兵器等
公式:核兵器、化学兵器、生物兵器、これらを運搬することができるミサイル(ロケット・無人航空機を含む)のことを指し、「核兵器等」という場合もある。
言い換え:核・化学・生物の3つ+それを運ぶミサイル。
ドローン(無人航空機)が入っていることに注意してください。
㉔ 開発等
公式:大量破壊兵器等の場合には、「開発、製造、使用又は貯蔵」を指し、通常兵器の場合には「開発、製造又は使用」を指す。
言い換え:大量破壊兵器は4つ(貯蔵まで)、通常兵器は3つ(貯蔵は入らない)。
★同じ「開発等」でも中身が違います。 見落としやすい差です。
㉕ 輸出等
公式:貨物の輸出及び技術の提供。
言い換え:貨物を出すことと、技術を渡すこと、両方。
㉖ 輸出令別表第3の地域
公式:輸出管理を厳格に実施している27カ国のことで、いわゆるグループAと呼ばれる地域。
言い換え:信頼できると位置づけられた27か国。
㉗ 大量破壊兵器等キャッチオール規制/通常兵器キャッチオール規制
公式(大量破壊兵器等):リスト規制品以外のものであっても、大量破壊兵器等の開発、製造、使用又は貯蔵に用いられるおそれがある場合には、輸出等に経済産業大臣の許可が必要となる制度。
公式(通常兵器):リスト規制品以外のものであっても、通常兵器の開発、製造又は使用に用いられるおそれがある場合には、輸出等に経済産業大臣の許可が必要となる制度。
言い換え:キャッチオール規制は、大量破壊兵器向けと通常兵器向けの2本立て。
覚え方のコツ

27語を丸暗記する必要はありません。関係で覚えると楽になります。「誰が・何を・何に使う・どこへ」の4つの問いと、「手順・許可」の2つの箱。この6つの箱に、27語がだいたい収まります。 迷ったら、誰が・何を・何に使う・どこへ、の順に戻ってください。
つまずきやすい3組

最後に、混同しやすい3組だけ整理します。用途要件と需要者要件(何に使うか/誰が使うか。2つ合わせて客観要件)、客観要件とインフォーム要件(自分で判断する/国から通知が来る)、役務と貨物(技術/モノ)。この3組を取り違えると判定の入口でつまずくので、「何に使うか」「誰が使うか」「誰が判断するか」の3つで区別してください。
まとめ
- 経済産業省のガイダンス別添3「輸出管理用語集」に27語が収録されている
- 最初に効くのは8語:該非判定/リスト規制/キャッチオール規制/客観要件/用途要件/需要者要件/インフォーム/役務
- 「役務」=この分野では「技術」。ソフトウェアも含む
- 需要者要件は「行っていた」(過去形)も対象
- 外国ユーザーリストは「改定されるので最新のものを」と定義文に書かれている
- 軍関係機関には警察・情報機関も含む
- ★「開発等」の中身が違う:大量破壊兵器は貯蔵まで、通常兵器は使用まで
- 大量破壊兵器等にドローン(無人航空機)が含まれる
- 輸出令別表第三=グループA=27か国
- 覚えるなら「誰が・何を・何に使う・どこへ・手順・許可」の6つの箱で
さて、資料を開いて、知らない言葉が半分以下になっていれば、この記事の役目は果たせました。
分からない言葉が出たら、また戻ってきてください。引く場所を決めておくのが、この分野のコツです。


- 次に読む:どこからが「輸出」になるのか — 手荷物・メール・クラウドまで。メール1通が輸出になります
- あわせて読む:輸出管理の「三本の矢」 — ⑨取引審査・⑩出荷管理が実務でどうつながるか
※ 定義は経済産業省「安全保障貿易管理ガイダンス[入門編]別添3 輸出管理用語集」によります。用語集は「キャッチオール規制」表記ですが、2025年10月9日の見直し以降、公式ページでは「補完的輸出規制(キャッチオール規制)」と併記されています。 用語・定義は改正で変わることがあります。最新版は 経済産業省 安全保障貿易管理 でご確認ください。「言い換え」は本記事による平易化で、公式の定義ではありません。
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