該非判定というと、多くの方が貨物を思い浮かべます。マトリクス表を開き、仕様書と突き合わせ、項番を確定する。
ですが外為法の規制は、貨物(48条1項)と技術(25条1項)の2本立てです。
そして実務では、貨物を売れば、その使い方の説明もついてきます。据付け、保守、点検、修理、オーバーホール、役務通達の定義では、これらはすべて「使用」に含まれます。
つまり、機械を納めたあとのアフターサービスが、技術提供として規制対象になりうるということです。
貨物だけ判定して安心すると、ここが抜けます。


この記事を読むと、あなたの判定はこう変わります
- 貨物の項番を確定したあと、同じ行を右へ辿るだけで技術側の扱いが分かるようになります
- △と●の記号が読めるようになり、プログラムと技術を区別して判断できます
- 契約に含まれるどの行為が技術提供にあたるかを、チェックリストで洗い出せます
- 貨物が非該当でも技術が該当するパターンを見落とさなくなります
有料部分でお渡しするもの
無料部分では「規制は貨物と技術の2本立て」「従来は表を2回開く必要があった」というところまでを整理しました。ここから先の有料部分では、それを実務の手順に落とし込みます。
- 合体マトリクス表の構造:貨物の行に「対応する技術規制」欄がある。表を2回開かなくてよくなる仕組み
- 記号の読み方:△=プログラム/●=技術。3階層(貨物→プログラム→そのプログラムを作る技術)の連鎖をどう読むか
- 「設計・製造・使用」の定義:特に「使用」に据付・保守・点検・修理・オーバーホールが含まれるという、見落としの正体
- 6ステップの確認手順:貨物判定 → 技術欄確認 → 記号確認 → 提供行為の洗い出し(6項目チェックリスト) → みなし輸出の確認 → 許可検討
- 逆方向の見落とし:貨物が非該当でも技術が該当することがある。プログラム単体提供の扱い
- 許可が不要になる場合:公知の技術・基礎科学分野。ただし誤認しやすい点も
- 記録に残す6項目:判定書に技術欄が無い場合の様式見直しまで
対価に見合うかどうかは、上の中身でご判断ください。以下は、その入口となる無料部分です。
貨物と技術は「別々の表」で管理されています
従来、判定に使う表も分かれていました。
- 貨物のマトリクス表(輸出令+貨物等省令)
- 技術のマトリクス表(外為令+貨物等省令)

貨物で該当項番を見つけたあと、もう一度、技術の表を開いて対応を探す。この手間が必要でした。
1. 「合体マトリクス表」という道具があります
経済産業省は、貨物と技術を1枚にまとめた表も公表しています。正式には貨物・技術一体化マトリクス表、通称合体マトリクスです。
構造はこうなっています。

従来の貨物側の列(輸出令の項番・項目、省令の項番・項目、用語、用語の意味)の右端に、「対応する技術規制」の列が足されています。
同じ行に、対応する技術規制が書かれています。 貨物の項番を見つけたら、その行を右へ辿るだけで技術側の扱いが分かる、という仕組みです。
「表を2回開かなくてよくなる」。
2. 記号の読み方:△と●
技術欄には記号が使われています。

△がプログラム、●が技術(プログラムを除く)です。
たとえば、ある貨物の行にはこう書かれています。
△ 第○項(△)の貨物の設計・製造・使用するために設計したプログラム ● 第○項(△)の貨物の設計・製造・使用に係る技術 ● 上記プログラムの設計・製造・使用に係る技術
読み解くとこうなります。
- その貨物を設計・製造・使用するために作られたプログラム(△)
- その貨物の設計・製造・使用に係る技術(●)
- 1のプログラム自体を設計・製造・使用する技術(●)
3階層になっているのが分かります。貨物 → それを扱うプログラム → そのプログラムを作る技術、という連鎖です。
3. 「設計・製造・使用」の意味を押さえる
技術規制の条文には、設計/製造/使用という語が繰り返し出てきます。これらは役務通達で定義されています。

設計は、設計研究、設計解析、設計概念、プロトタイプの製作・試験、パイロット生産計画、設計データ、設計データを製品に変える過程、外観設計、総合設計、レイアウト等。製造の前段階のすべてです。
製造は、建設、生産エンジニアリング、製品化、統合、組立て、検査、試験、品質保証等。すべての製造工程です。
使用は、操作、据付(現地据付を含む)、保守(点検)、修理、オーバーホール、分解修理です。
注目してほしいのは「使用」です。
据付け・保守・点検・修理・オーバーホールが、すべて「使用」に含まれます。つまり
機械を納めたあとのアフターサービスが、技術提供にあたりうる
これが冒頭で述べた見落としの正体です。
「売って終わりではなく、その後の指導も規制対象になりうる」。
4. 実務での確認手順
合体マトリクスを使った手順を整理します。

① 貨物の該非判定を行う(従来どおり)。② 該当項番が確定したら、同じ行の「対応する技術規制」欄を見る。③ 記号を確認する。△ならプログラムの提供が、●なら技術(プログラム以外)の提供が規制対象になりえます。
④ 自社が提供する行為を洗い出す。図面・仕様書の提供/操作マニュアルの提供/据付け作業/保守・点検・修理/操作研修・技術指導/制御ソフトの提供・アップデートの6つです。
⑤ 提供先が非居住者・特定類型に当たらないか確認する(みなし輸出)。⑥ 該当すれば、25条1項の許可を検討する。
④の洗い出しが肝です。貨物の輸出契約に、技術提供が含まれていないか。契約書・見積書を見て確認してください。
5. 貨物が非該当でも、技術が該当することがあります
逆方向の見落としもあります。
貨物が非該当だから技術も非該当。これは成り立ちません。技術規制は外為令別表で独自に規定されており、貨物の該非とは別に判断されます。
特に注意したいのが、外為令別表の16の項です。ここは貨物側の16項と同様、補完的輸出規制に対応する部分になります。
また、プログラム単体の提供(ソフトウェアのライセンス販売、アップデート配信など)は、貨物の輸出を伴いません。それでも技術規制の対象になりえます。
6. 許可が不要になる場合もあります
すべての技術提供に許可が要るわけではありません。役務通達には、許可を要しない場合が定められています。代表的なものは

- 公知の技術:すでに公開されている技術の提供
- 基礎科学分野の研究活動:自然科学の原理の究明を主目的とし、特定の製品の設計・製造を目的としないもの
ただし、「公知だと思っていたら違った」という誤認は起こります。社内マニュアルや独自ノウハウが含まれていないか、確認が必要です。
7. 記録に残すこと
技術側の判定も、貨物と同じように記録します。
- 貨物の該当項番
- 対応する技術規制の有無(△/●の別)
- 自社が提供する行為の一覧
- 許可不要と判断した場合、その根拠(公知/基礎科学 等)
- 提供先の居住者・非居住者の別、特定類型該当性の確認結果
- 判断日と、参照した版(施行日)
貨物の判定書に技術欄が無い場合、様式の見直しを検討してください。別々に管理すると、片方が抜けます。
まとめ
- 外為法の規制は貨物(48条1項)と技術(25条1項)の2本立て
- 合体マトリクスなら、貨物の行を右へ辿るだけで対応する技術規制が分かる
- 記号は△=プログラム、●=技術(プログラムを除く)
- 「使用」には据付・保守・点検・修理・オーバーホールが含まれる。アフターサービスが技術提供にあたりうる
- 貨物が非該当でも技術が該当することがある。プログラム単体の提供にも注意
- 公知の技術・基礎科学分野は原則対象外。ただし誤認に注意
- 判定書に技術欄を設ける。別管理だと片方が抜ける
さて、直近に納入した設備について、据付けや保守の技術提供まで判定していたでしょうか。


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