概要

輸出しようとしている製品が規制対象かどうか。これを経済産業省に問い合わせれば教えてもらえる。そう思っていませんか。

教えてもらえません。

経済産業省は公式Q&Aで、はっきりこう回答しています。該非判定は経済産業省では行わないので、輸出者が責任をもって行ってください、と。

では、誰がどうやって決めるのでしょうか。

みなとくん船長、じゃあ困ったとき誰に聞けばいいんですか
あんぼう船長聞く先はある。じゃがな、"決める"のは自分じゃ。そこを取り違えると、ずっと迷子になるぞ
## この記事で学べること
  • 該非判定を行う責任が、役所ではなく自社にあること
  • 何を見て判定するのか、聞ける先はどこか
  • 非該当だった場合でも安心できない理由

そもそも「該非判定」とは

該非判定(がいひはんてい)=輸出する貨物や技術が、規制リストに「該当する/しない」を見きわめる作業です。

「該」=該当する、「非」=非該当。この2つを判定するので該非判定といいます。

判定の結果、リストに該当すれば、原則として経済産業大臣の許可が必要になります。該当しなければ、そのまま輸出できる場合があります(ただし、これで終わりではありません。後述します)。

なぜ役所が判定してくれないのか

決めるのは、役所ではなく自社
決めるのは、役所ではなく自社

理不尽に感じるかもしれません。でも、制度の作りを見ると理由が見えてきます。

判定に必要なのは、製品の詳細な仕様です。

  • 何ワットの出力か
  • 精度は何ミクロンか
  • どんな材料でできているか
  • どんな用途に使えるか

これらを正確に知っているのは、その製品を作り、売っている会社です。役所は個々の製品の中身を知りません。

「モノを一番よく知っている人が判定する、という設計」

では、何を見て判定するのか

マトリクス表は、3階層を横に並べたもの
マトリクス表は、3階層を横に並べたもの

判定に使う道具が用意されています。マトリクス表です。

経済産業省が公表している一覧表で、規制品目が1項から16項までの分類ごとに整理されています。貨物用と技術用があり、両方を1枚にまとめた合体版もあります。

構造はこうなっています。輸出令(政令)が「こういう貨物を規制する」という大枠貨物等省令(省令)が「具体的なスペックはこれ」という数値・条件運用通達が「この用語はこういう意味」という解釈です。

マトリクス表は、上の図のようにこの3階層を横に並べて見比べられるようにしたものです。自社製品の仕様書と、この表を突き合わせるのが判定作業になります。

「聞く先」はあります

答えは出してもらえない。道具はもらえる
答えは出してもらえない。道具はもらえる

判定してもらえないとはいえ、放り出されるわけではありません。

  • 経済産業省のQ&Aが公開されています。600問近くあり、実務でよくある論点が整理されています
  • ガイダンス(入門編)が無料で公開されており、判定の手順が具体例つきで解説されています
  • 事前相談の窓口もあります

つまり「判定してください」は受け付けてもらえませんが、「この条文の解釈を教えてください」は聞けるということです。

「答えは出してもらえないが、道具と解説はもらえる」

非該当なら安心、ではない

非該当でも、そこで終わらない
非該当でも、そこで終わらない

ここが見落とされやすいところです。

該非判定で「非該当」と分かっても、それで終わりではありません。もう一つの規制が残っています。

リストに載っていない貨物でも、大量破壊兵器などの開発に使われるおそれがある場合には許可が必要になることがあります。これが補完的輸出規制(旧・キャッチオール規制)です。

つまり輸出管理は、上の図のように① モノを見る(該非判定)=リストに載っているか② 相手と用途を見る(取引審査)=危ない使われ方をしないかという二段構えになっています。①だけで終わらせると、②で漏れます。

判定した結果は記録に残す

もらった判定書を、鵜呑みにしない
もらった判定書を、鵜呑みにしない

判定は「やって終わり」ではありません。該非判定書という書類に結果を残します。

これは社内の記録であると同時に、取引先へ提示する資料にもなります。参考様式も公表されています。

ここで一つ、重要な注意があります。取引先からもらった該非判定書を、そのまま信じてはいけないということです。

実際、経済産業省の違反事案の分析によると、他者の誤判定を鵜呑みにしたことによる違反が5%あります。判定書に誤りがあっても、輸出の責任を負うのは実際に輸出した会社です。

まとめ

  • 該非判定は経済産業省ではなく、輸出者が行う(公式Q&Aで明言されている)
  • 理由は、製品の詳細仕様を知っているのが会社側だから
  • 道具はマトリクス表。輸出令→貨物等省令→運用通達の3階層を横に並べたもの
  • Q&A・ガイダンス・事前相談など、解釈を聞ける先はある
  • 非該当でも終わりではない。補完的輸出規制という二段目がある
  • 結果は該非判定書に残す。もらった判定書を鵜呑みにしない

さて、あなたの会社では、この判定を「誰が」担当することになっているでしょうか。

決まっていないとすれば、それ自体がリスクかもしれません。まず「誰がやるか」を決める。道具の使い方は、そのあとで十分間に合います。

みなとくん船長、まず社内で担当を決めるところからですね
あんぼう船長そのとおりじゃ。道具の使い方はあとから覚えられる。じゃが、誰もやらん状態は放っておくと危ないでな
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