輸出管理の経験を職務経歴書に書こうとして、こう困りませんか。

「毎日やっていたけど、なんて書けばいいんだろう」

書くことがないのではありません。言葉を持っていないだけです。

【自分の感覚】
「メーカーに問い合わせて、書類を集めて、
 リストと照らして、上司に確認してもらっていた」

【制度の言葉】
「他社調達品の該非判定書の入手・精査、
 需要者チェック(外国ユーザーリスト照合)、
 ダブルチェック体制での判定確認」

同じことを言っています。 ただ、採用側に伝わるのは後者です。

なお、この記事は盛り方を教える記事ではありません。輸出管理は誠実さが職能そのものの分野です。やったことを、正確に、伝わる言葉で書く。それだけです。

みなとくん船長、大したことはしていないと思っていました
あんぼう船長そう思うておる人ほどな、書き出すと出てくるんじゃ
この記事は、これから輸出管理・貿易実務の仕事を目指す方、および転職を考えている方に向けて書いています。

この記事を読むと、あなたはこう変わります

  • 書けることが思っているより多いと分かります
  • 採用側に伝わる言葉が手に入ります
  • 面接で崩れる書き方を避けられます
  • 未経験でも書ける構成が分かります

この記事で扱うこと

この記事の後半では、実際に動ける形にします。

  • ★棚卸しのフレーム輸出者等遵守基準の10項目をチェックリストに。③④⑤が三本の矢⑥〜⑩は体制側の経験として強い
  • ★「やったこと」→「制度用語」の変換表(20行超):該非判定/取引審査/出荷管理・許可/体制
  • ★数字を添えられるもの・添えられないもの「違反ゼロ」を書いてはいけない理由と、代わりに書くべきこと
  • 構成例(実務経験あり)★「使用した一次情報」を書くと扱っていた資料のレベルが伝わる
  • 構成例(未経験):学習内容+理解している内容+★現職との接点の3点セット
  • 資格の書き方「受験予定」は書いてよい/「合格見込み」は書かない公認・認定という表現は使わない
  • ★面接の質問を経歴書で設計する:書かないことは聞かれない
  • ★いちばん効く1行:「自分の限界を分かっている」ことを示す書き方(3例)

最初に断っておきます

この記事は、盛り方を教える記事ではありません。

【やってはいけない】
✗ やっていないことを書く
✗ 関与していない範囲を「担当」と書く
✗ 資格を持っていないのに保有と書く
✗ 数字を作る

輸出管理は、誠実さが職能そのものの分野です。経歴を盛った人が、社内で「大丈夫です」と言っても信用されません。

やったことを、正確に、伝わる言葉で書く。 それだけです。


1. 棚卸しのフレーム:遵守基準の10項目を使う

棚卸しは、10項目のチェックリスト
棚卸しは、10項目のチェックリスト

「何を書けばいいか分からない」の解決策です。

輸出者等遵守基準の項目を、チェックリストとして使ってください。

# 遵守基準の事項 自分は関わったか
統括責任者の選任
輸出管理体制の整備
該非確認の手続の制定
用途確認・需要者等確認
出荷確認
監査
研修
子会社への指導
文書保存
法令違反時の報告・再発防止策

★③④⑤が三本の矢です。ここに関わっていれば、実務経験として十分に語れます。

⑥〜⑩に1つでも関わっていれば、それは「体制側の経験」として、かなり強い材料になります。

2. 「やったこと」→「制度用語」の変換表

実際の言い換えです。左が自分の感覚、右が職務経歴書の言葉です。

該非判定まわり

やったこと 書き方
製品の仕様を調べて、法令と見比べた 自社製品の該非判定(マトリクス表・貨物等省令に基づく項番特定)
メーカーに書類をもらった 他社調達品の該非判定書の入手・内容精査
判定書をファイルに整理した 該非判定書の管理・版管理
先輩に確認してもらった ダブルチェック体制下での判定業務
改正があって見直した 法令改正に伴う該非判定の再実施・判定書の改訂

取引審査まわり

やったこと 書き方
相手先をリストで調べた 需要者確認(外国ユーザーリスト照合)
何に使うか聞いた 用途確認(客観要件の確認)
チェックリストを埋めた 用途・需要者チェックリストの作成および取引審査票の起案
判断がつかず上に相談した 判断困難案件のエスカレーション対応
経産省に電話した 経済産業省への事前相談

出荷管理・許可まわり

やったこと 書き方
出荷前に書類を突き合わせた 出荷管理(同一性確認)
許可申請の書類を作った 輸出許可申請書類の作成(個別許可)
NACCSで申請した 電子申請(NACCS)による許可申請業務
包括許可の範囲を確認した 包括許可の適用範囲の確認・運用
特例が使えるか調べた 特例(少額特例・無償特例等)の適用可否判断

体制まわり(あると強い)

やったこと 書き方
規程の改定を手伝った 輸出管理内部規程(CP)の改訂対応
届出の書類を出した CP届出・自己管理チェックリストの年次提出
部署に説明した 社内研修の実施(対象:営業部門/技術部門)
改正内容を社内に流した 法令改正情報の社内展開・影響範囲の特定
チェックを受けた 内部監査への対応
手順書を作った 業務手順書の整備

3. 数字を添えられるもの・添えられないもの

違反ゼロは、書いてはいけない
違反ゼロは、書いてはいけない

数字があると具体性が出ます。 ただし、確認できないものは書かないでください。

【書ける(自分で数えられる)】
□ 担当した製品数・品目数
□ 年間の判定件数(おおよそでも)
□ 対応した仕向国数
□ 作成した許可申請件数
□ 研修の実施回数・受講者数

【書けない(確認できない/盛りになる)】
✗ 「違反ゼロを達成」
   → ★違反が起きなかったのは自分の功績とは限らない
✗ 「リスクを○%削減」
   → 測定していない
✗ 「業務効率を○%改善」
   → 根拠がない

★「違反ゼロ」は書かないでください。 面接で「どう担保したのですか」と聞かれて答えられなければ、逆効果です。

書くなら、こうです。

【弱い】
「違反ゼロを維持」

【強い】
「該非判定のダブルチェック体制を導入し、
 出荷前の同一性確認を手順に組み込んだ」
        ↓
★やったことを書く。結果を保証しない

4. 職務経歴書の書き方(構成例)

実務経験がある場合

■ 輸出管理業務(20XX年X月〜現在)

【担当範囲】
自社製品○品目の該非判定、取引審査、出荷管理
仕向国:○か国/年間判定件数:約○件

【具体的な業務】
・自社製品の該非判定(マトリクス表・貨物等省令に基づく項番特定)
・他社調達品の該非判定書の入手および内容精査
・需要者確認(外国ユーザーリスト照合)、用途確認
・取引審査票の起案、判断困難案件のエスカレーション
・出荷管理(同一性確認)
・輸出許可申請書類の作成(個別許可・年間○件)

【体制面での関与】
・2025年10月改正に伴う確認シートの改訂
・営業部門向け社内研修の実施(年○回)

【使用した一次情報】
輸出令・外為令・貨物等省令・運用通達・役務通達
マトリクス表、外国ユーザーリスト

★最後の「使用した一次情報」が効きます。どのレベルの資料を扱っていたかが一目で伝わります。

実務経験がない場合(未経験からの転職)

経験がないなら、学習と現職の接点を書きます。

■ 安全保障貿易管理に関する学習(20XX年X月〜)

【学習内容】
・経済産業省 説明会資料(入門編・初級編・中級編パート1)を通読
・安全保障貿易管理ガイダンス[入門編]および別添(用語集・事例集)
・大学・研究機関 ヒヤリハット事例集
・米国輸出管理規則(EAR)の原文(eCFR)
  ※米国連邦規則はパブリックドメインのため原文を参照

【理解している内容】
・リスト規制と補完的輸出規制の違い、三本の矢の手順
・法令の階層(法律・政令・省令・通達)と、用語の定義の所在
・輸出者等遵守基準の義務/努力義務の区別

【現職との接点】
(例:技術系)製品仕様の把握、試験成績書の解釈
(例:営業系)顧客の事業内容・用途の聞き取り
(例:貿易事務)通関実務、書類の整合性確認

★「現職との接点」を必ず書いてください。 ここがないと、ただの学習記録になります。

5. 資格の書き方

資格は、正確にそのまま書く
資格は、正確にそのまま書く

STC(実務能力認定試験)を持っている、または受験予定の場合です。

【持っている】
安全保障輸出管理実務能力認定試験 STC Associate 合格(20XX年X月)

【段階的取得の途中】
安全保障輸出管理実務能力認定試験 STC Legal Expert 合格(20XX年X月)
※STC Expert 貨物・技術編を20XX年度受験予定

【受験予定】
安全保障輸出管理実務能力認定試験 STC Advanced 受験予定(20XX年X月)

★「受験予定」は書いてよいです。学習の意思が伝わります。ただし

✗ 「合格見込み」とは書かない
✗ 「勉強中」だけで終わらせない(何をどこまで、を書く)

なお、公式性を装う表現(「公認」「認定講師」など)は使わないでください。 試験の主催団体が定めた資格名を、正確にそのまま書きます。

6. 面接で聞かれることに、経歴書で先回りする

経歴書は、質問を設計する道具
経歴書は、質問を設計する道具

職務経歴書は、面接の質問を設計する道具でもあります。

【書いておくと、聞かれる(=話せる)】
□ 直近の法令改正への対応
   → 「2025年10月改正の対応」と書けば、必ず聞かれる
□ 判断に迷った案件の処理
   → 「判断困難案件のエスカレーション」と書けば聞かれる
□ 社内への周知
   → 「営業部門向け研修」と書けば聞かれる

【書かないと、聞かれない】
✗ 淡々と「輸出管理業務に従事」とだけ書く

★話したいことを、経歴書に置いておく。 これが面接対策です。

7. いちばん効く1行

いちばん効く、1行
いちばん効く、1行

最後に、経験の有無にかかわらず効く書き方を1つ。

「自分の限界を分かっている」ことを示す1行です。

【例】
・独学のため演習量が不足していると認識しており、
  実務では判定の場数を早く踏みたいと考えています

・自社製品の判定は経験がありますが、
  技術取引・みなし輸出の実務経験がないため、
  重点的に学びたい領域と考えています

・体制構築の経験がないため、
  遵守基準の努力義務にあたる領域(監査・研修)を
  今後の課題と認識しています

この分野では、「分かっているつもりの人」がいちばん危ないと考えられています。

自分の穴を言語化できる人は、採用側から見て安心材料になります。

まとめ

  • 書くことがないのではなく、言葉を持っていないだけ
  • ★盛らない。 輸出管理は誠実さが職能そのもの
  • 棚卸しは輸出者等遵守基準の10項目をチェックリストにする。③④⑤が三本の矢⑥〜⑩は体制側の経験として強い
  • 「やったこと」→「制度用語」の変換表を使う(該非判定/取引審査/出荷管理・許可/体制)
  • 数字は自分で数えられるものだけ★「違反ゼロ」は書かない:担保を説明できない
  • 結果ではなくやったことを書く
  • 経歴書には★「使用した一次情報」を書く。扱っていた資料のレベルが伝わる
  • 未経験なら学習内容+理解している内容+★現職との接点の3点セット
  • 資格は正確に。「受験予定」は書いてよい「合格見込み」は書かない公認・認定といった表現は使わない
  • ★話したいことを経歴書に置く。書かないことは聞かれない
  • ★自分の穴を言語化した1行が効く

さて、輸出者等遵守基準の10項目を印刷して、関わったものにチェックを入れてみてください。

思っているより、書けることがあるはずです。

みなとくん船長、書き出してみます
あんぼう船長それがよい。やったことを、やったとおりに書く。それがいちばん強いんじゃ
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※ 遵守基準の項目・制度用語は経済産業省の公表資料によります。試験の名称は CISTEC 実務能力認定試験 の表記に従ってください。本記事は書き方の整理であり、採用の結果を保証するものではありません。 記載内容は必ず事実に基づくものとし、確認できない実績・数値は記載しないでください。なお本記事は、CISTECと関係のない第三者による整理であり、公認・認定を受けたものではありません。

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