積替規制は「輸出管理の一種」です。だから、通常の輸出と同じつもりで扱う。それが事故のもとです。
経済産業省のQ&Aを読むと、通常の輸出と違う点が4つあります。
| 通常の輸出 | 積替規制 | |
|---|---|---|
| 申請するのは誰か | 輸出者(荷主) | ★船会社・航空会社等 |
| 該非判定 | 必須 | ★2〜16の項は不要 |
| 包括許可 | 使える | ★使えない(個別許可のみ) |
| 少額特例 | 使える | ★使えない |
4つとも「え?」となるところだと思います。


陸に上げたかどうかで決まります。
この記事は、現職で輸出管理・貿易実務に携わっている方に向けて書いています。
この記事を読むと、あなたの実務はこう変わります
- 自社が申請義務者になりうるかが判定できます
- 通常の輸出の感覚で判断して過剰にも過少にもならなくなります
- 包括許可が使えない前提でスケジュールが組めます
- B/Lの本数という、最初の切り分けが手に入ります
この記事で扱うこと
この記事の後半では、判断できる形にします。
- ★B/Lが2本なら通常の輸出:最初に見るのは書類の本数。ここを間違えると以降の判断が全部ずれる
- ★申請義務者は船会社・航空会社等(不在なら船舶代理店・オペレーター)。居住者・非居住者を問わない。メーカー・商社側/運送側それぞれの立場での意味
- ★2〜16の項は該非判定が不要な理屈:「規制対象が貨物によって異ならない」から。1の項だけは該当確認が必要
- ★許可が必要になるきっかけは2つだけ:輸入者等からの連絡/経産大臣の通知。客観要件を自分で判断する構造ではない。外国ユーザーリスト掲載でも、それだけでは許可義務は生じない
- ★経由地は見ない:米国経由メキシコ行きの設例で、なぜ許可が必要になるか
- 包括許可も少額特例も使えない。金額の大小で判断してはいけない理由
- 社内手順への落とし込み:運送側/荷主側それぞれのチェックリスト
- ★通常の輸出と混ぜないための一覧表(12項目)。この1枚が本記事の到達点
そもそも「仮陸揚げ貨物」とは何か

定義から確認します。Q&Aの回答を引きます。
外国から到着した貨物であって、我が国の港や空港の保税地域で一時的に積卸し、再び外国向けの船舶や航空機等に積み込む貨物を指します。洋上で積み替える貨物は対象となりません。
★「洋上での積み替えは対象外」、ここが最初の線引きです。
陸に上げたかどうかで決まります。
1. 船荷証券が2本なら、通常の輸出です

まず、そもそも積替規制の話なのかを切り分けます。Q&Aにこうあります。
なお、船荷証券等が複数(外国から我が国、我が国から外国)となる仮陸揚げ貨物については、従来から輸出にかかる規制対象となっていますので、通常の輸出と同様の管理が必要となっております。
整理すると
【B/L が1本】
外国 → (日本で積替)→ 外国 ★1本で通し
↓
積替規制の話
【B/L が2本】
① 外国 → 日本
② 日本 → 外国
↓
★通常の輸出。該非判定も特例も、いつもどおり
最初に見るのは書類の本数です。ここを間違えると、以降の判断が全部ずれます。
2. 申請するのは「輸出しようとする者」=船会社等

いちばん誤解されるところです。Q&Aを引きます。
許可の申請をすべき者は……輸出しようとする者です。居住者、非居住者を問いません。輸出しようとする者とは、積替規制の場合には、仮陸揚げ貨物を輸出するための手段となる船舶又は航空機を運営する者です。したがって、船会社や航空会社がこれに該当しますが、船会社や航空会社が本邦において主体的に運営するものとならない場合には、これに代わり船舶代理店又は船舶オペレーター等であって当該輸出手段を実質的に運営する者が該当します。
つまり
【申請義務者】
第1候補:船会社・航空会社
第2候補:船舶代理店・船舶オペレーター等
(船社が本邦で主体的に運営していない場合)
★居住者・非居住者を問わない
★荷主ではない
これが実務にどう効くか。
【メーカー・商社の立場】
自社が申請者になるわけではない
↓
でも★情報を出す側にはなる
(貨物の内容・仕向地・需要者)
【海運・航空・代理店の立場】
★自社が申請義務者になりうる
↓
「預かっているだけ」では済まない
運送を担う側に、輸出管理の体制が要るということです。
3. 2〜16の項は「該非判定を行う必要がない」

これも意外なところです。Q&Aの回答を引きます。
輸出貿易管理令別表第1の1の項(武器)については、これに該当していることの確認が必要です。輸出貿易管理令別表第1の2の項から16の項の(中欄に掲げる)貨物については、核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合等に該当するすべての貨物が対象となり、規制対象が貨物によって異なることがありませんので、該非判定を行う必要はありません。
理屈はこうです。
【通常の輸出】
どの項番に該当するかで、規制の有無が変わる
↓
だから該非判定が要る
【積替規制の2〜16の項】
★項番が何であれ、扱いは同じ
(おそれがあれば許可、なければ不要)
↓
だから該非判定の必要がない
Q&Aは、対象範囲についてもこう述べています。
輸出貿易管理令別表第1の1の項から16の項に該当するものは全てこの規制の対象です。したがって、積替規制の適用のないものは食料品や木材などに限定されます。
つまり、ほぼ全部が対象。 だから項番を絞る意味がない、ということです。
ただし1の項(武器)だけは、該当確認が必要です。ここは別扱いです。
4. 許可が必要になる「きっかけ」が限定されています

ここが、通常の補完的輸出規制と違う点です。
2〜16の項について、許可が必要になるのは次の場合です。
輸出貿易管理令別表第3に掲げる地域以外を仕向地とするもので、 ① 核兵器等の開発等のために用いられることとなる旨、輸入者等から連絡を受けたとき ② 核兵器等の開発等のために用いられるおそれがあるものとして、経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたとき
2つだけです。
【通常の補完的輸出規制】
□ 客観要件(用途要件・需要者要件)を自分で判断
□ インフォーム要件
【積替規制(2〜16の項)】
□ ★輸入者等からの「連絡」
□ ★経産大臣からの「通知」(インフォーム)
自分で用途・需要者を調べて判断する、という構造にはなっていません。
Q&Aは、この点を念押ししています。
需要者が誰であるかに関係ありません。(中略)輸出貿易管理令別表第1の2の項から16の項の貨物である場合には、①核兵器等の開発等のために用いられることとなる旨輸入者等から連絡を受けたとき、又は、②……通知を受けたときに限り、許可が必要となります。
外国ユーザーリストに載っている需要者でも、それだけでは許可義務は生じません。
★ここは通常の輸出管理の感覚で判断すると、逆に過剰になります。
ただし、1の項(武器)は無条件で許可が必要です。この差は絶対に押さえてください。
5. 経由地ではなく、仕向地で見る
Q&Aに、分かりやすい設例があります。
日本において積替が行われた後、米国を経由してメキシコへ向けて輸出される場合、許可が必要となりますか。
→ 経由地が輸出令別表第3の地域であっても、仕向地が輸出令別表第3の地域以外なので許可が必要となります。
日本(積替)→ 米国(経由・グループA)→ メキシコ(仕向地)
↑
★ここで判断する
経由地がどこかは関係ありません。最終の仕向地を見ます。
「アメリカ経由だから大丈夫」、通用しません。
6. 包括許可も少額特例も使えません

これは運用に直結します。
積替規制は個別許可ですか。包括許可制度はありますか。 → 個別許可が必要です。包括許可は使用できません。
積替規制に少額特例は適用できますか。 → 適用はできません。
つまり
【使えないもの】
□ 包括許可(一般・特別一般・特定・その他すべて)
□ 少額特例
【できること】
□ 個別許可の申請のみ
「うちは包括許可を持っているから」は通用しません。
そして少額特例も使えないので、金額の大小で判断してはいけません。
時間の余裕を見た運用が要ります。個別許可には審査期間がかかります。
7. 申請の窓口と方法
【担当】
経済産業省 安全保障貿易審査課
【申請方法】
□ 経済産業省の窓口
□ 郵送
□ 電子申請(NACCS)
のいずれか
通常の輸出許可と同じ窓口・同じ手段です。
8. 社内手順への落とし込み
積替を扱う可能性がある会社向けの、具体的な作業です。
海運・航空・代理店の立場なら
【体制】
□ ★自社が申請義務者になりうることを、経営に共有する
□ 仮陸揚げ貨物を識別できる業務フローがあるか
□ B/Lの本数で切り分ける手順があるか
【案件ごと】
□ B/Lは1本か2本か(★最初に確認)
□ 洋上積替か、陸揚げか(★洋上なら対象外)
□ 1の項(武器)に該当しないか ← 該当確認が必要
□ 仕向地は別表第三か、それ以外か
□ 輸入者等から「核開発等に用いる」旨の連絡を受けていないか
□ 経産大臣からの通知を受けていないか
【記録】
□ 上記の確認結果と、確認日
□ 参照した書類(B/L・インボイス等)
荷主(メーカー・商社)の立場なら
□ 自社貨物が第三国間で積み替えられる経路を把握しているか
□ 運送人から情報提供を求められたときに応じられるか
□ ★自社は申請義務者ではないが、情報の出し手にはなる
9. 通常の輸出と混ぜないための一覧
最後に、この記事の要点を1枚にします。
| 論点 | 積替規制の答え |
|---|---|
| 洋上での積み替え | 対象外 |
| B/Lが2本 | 通常の輸出として扱う |
| 申請するのは誰か | 船会社・航空会社等(居住者・非居住者を問わない) |
| 対象貨物 | 1〜16の項すべて(食料品・木材等を除く) |
| 該非判定 | 1の項は該当確認が必要/2〜16の項は不要 |
| 許可のきっかけ(2〜16の項) | 輸入者等からの連絡 or 経産大臣の通知の2つのみ |
| 需要者が外国ユーザーリスト掲載 | それだけでは許可義務は生じない |
| 1の項(武器) | 全地域・無条件で許可 |
| 経由地 | 見ない。仕向地で判断 |
| 包括許可 | 使えない |
| 少額特例 | 使えない |
| 窓口 | 安全保障貿易審査課(窓口・郵送・電子申請) |
まとめ
- 積替規制は通常の輸出と作りが違う。同じつもりで扱うと事故る
- 仮陸揚げ=保税地域で一時的に積卸しするもの。★洋上での積み替えは対象外
- ★B/Lが2本なら通常の輸出。最初に書類の本数を見る
- ★申請義務者は船会社・航空会社等(不在なら船舶代理店・オペレーター)。荷主ではない
- 対象は1〜16の項すべて。適用のないものは食料品・木材などに限られる
- ★2〜16の項は該非判定不要(規制対象が貨物によって変わらないため)。1の項は該当確認が必要
- ★2〜16の項で許可が要るのは「輸入者等からの連絡」か「経産大臣の通知」の2つだけ。自分で客観要件を判断する構造ではない
- 需要者が外国ユーザーリスト掲載でも、それだけでは許可義務は生じない
- 1の項(武器)は全地域・無条件
- ★経由地は見ない。仕向地で判断する(米国経由メキシコ行きは許可が必要)
- ★包括許可も少額特例も使えない。個別許可のみ
さて、自社が運送側なら、仮陸揚げ貨物を識別する手順は、業務フローに入っているでしょうか。
次回は、同じ構造を持つもう1つの制度、仲介貿易取引規制の実務を扱います。似ていますが、見る場所が1か所増えます。


※ 内容は経済産業省 Q&A「積替規制」(最終更新2026年4月23日)および「積替規制」ページによります。制度・運用は改正されることがあります。 実務では必ず 経済産業省 安全保障貿易管理 で最新の内容をご確認のうえ、判断に迷う場合は安全保障貿易審査課へご相談ください。
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