概要
これまでの記事で、輸出管理は「日本から出すもの」を見る制度だとお伝えしてきました。
では、こういう荷物はどうなるでしょうか。

外国の会社が、別の外国へ送る荷物。たまたま日本の港で船を乗り換えて、数日置かれるだけで、そのまま出ていく。
日本の会社のものではありません。日本で作ったものでもありません。
それでも、許可が必要になる場合があります。
これが積替規制(つみかえきせい)です。


- 日本のものでなくても、日本から出せば対象になること
- 積替規制の2つのパターンと、発生する場面
- 通常の「輸出」との違い
経済産業省の説明
こう書かれています。
仮に陸揚げした貨物については、事前に経済産業大臣の許可が必要になる場合があります。
「仮に陸揚げした」。つまり、いったん日本で降ろしただけの荷物です。
なぜこんな制度があるのか。理由は単純です。
この制度がなければ、抜け道になるから。

もし積替規制がなかったら、どうなるでしょうか。懸念のある国へ直接送れば規制されるのに、いったん日本で積み替えれば素通りできてしまいます。
規制を迂回するルートを塞ぐための仕組みです。
2つのパターンがあります
ここが、この制度のいちばんのポイントです。扱いが2つに分かれます。

輸出令別表第一の「1の項」、つまり武器そのものは、全ての国・地域が対象です。条件はありません。該当すれば許可が必要になります。
いっぽう「2の項〜16の項」は、別表第三の地域(グループAの27か国)を除く全ての国・地域が対象で、大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれがある場合に許可が必要になります。
言い換えると、1の項はどこ行きでも無条件で許可が要る。2の項から16の項は、グループA行きなら対象外で、それ以外の国行きで懸念がある場合に許可が要る、ということです。
「1の項だけ扱いが違う」。これは輸出管理のあちこちで出てくる型です。武器そのものは、特別扱いされます。
「武器は無条件、それ以外は懸念があるとき」。
どこで発生するのか
実務で問題になるのは、こういう場面です。

発生するのは、日本の港・空港での積み替え(トランシップ)、保税地域に一時的に置かれる荷物、船の乗り換えのために降ろす荷物、経由便での貨物の載せ替えです。
関わるのは、荷主だけではありません。 海運・航空会社、フォワーダー(貨物利用運送)、港湾・空港の事業者、保税倉庫。いずれもこの規制の当事者になりえます。
「自社の商品ではないから関係ない」とは言い切れない領域です。
「船荷証券」という言葉が出てきます
条文の説明には、こういう表現があります。
本邦以外の地域を仕向地とする船荷証券により運送されたもの
船荷証券(ふなにしょうけん/B/L)とは、海上輸送の荷物について、運送人が発行する書類です。どこへ運ぶかが書かれています。
つまり、書類上の行き先が日本ではなく外国で、それでも日本でいったん降ろされた。この場合に、積替規制の対象になりうるということです。
書類の宛先が最初から外国であることが、ポイントです。日本向けに輸入されたものを、あとで輸出するのは通常の輸出です。
「輸出」との違いを整理する
似ているので、並べます。

通常の輸出は、荷物の出発地が日本で、日本から出ていきます。日本向けに輸入したものを、あとで輸出する場合がこれにあたります。
積替規制は、荷物の出発地が外国で、日本は通過するだけです。書類上の仕向地が、最初から日本ではありません。
規制の中身も少し違います。2の項〜16の項は、通常の輸出ならリスト規制で全地域が対象、それ以外は補完的輸出規制ですが、積替規制ではグループAを除いて懸念がある場合に限られます。
いっぽう1の項の扱いは、どちらも同じです。全地域で許可が必要になります。武器は、通り過ぎるだけでも止まる。
実務で気をつけること
初めて携わる方向けに、押さえどころだけ挙げます。
自社が荷主でなくても、積み替えを扱う事業者は、この規制の当事者になりえます。「預かっているだけ」では説明になりません。
書類で確認することは4つです。
- 船荷証券の仕向地
- 貨物の内容(該当項番)
- 最終需要者
- 用途
判断に迷ったら、経済産業省に相談してください。相談窓口があります。
この分野の鉄則は変わりません。「分からないまま通さない」です。
関係する法令
経済産業省が挙げているものです。
- 輸出貿易管理令
- 仮に陸揚げした貨物が核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める省令
2つ目の省令の名前が長いですが、「おそれがある場合」を定める省令だと思ってください。「どういう場合が『おそれあり』なのか」を書いた省令です。
なお、経済産業省は積替規制に関するQ&Aも公開しています。実務で判断に迷ったときは、そちらも参照してください。
まとめ
- 積替規制=仮に陸揚げした貨物についても、許可が必要になる場合がある制度
- 目的は規制の迂回ルートを塞ぐこと
- ★1の項(武器そのもの)は、全ての国・地域が対象。条件なし
- 2の項〜16の項は、別表第三(グループA)を除く地域向けで、大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれがある場合
- 判断のカギは船荷証券の仕向地。最初から日本以外であること
- 通常の輸出との違いは「日本から出る」か「日本を通過する」か
- 荷主でなくても当事者になりうる(海運・フォワーダー・保税倉庫など)
- 関係法令は輸出貿易管理令と「おそれがある場合を定める省令」
さて、「自社の商品ではないから関係ない」。そう考えていた荷物は、ありませんか。


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※ 内容は経済産業省「積替規制」(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/anpo04.html ・2026年8月2日確認)によります。制度は改正されることがあります。 最新の内容は 経済産業省 安全保障貿易管理 でご確認ください。個別の取引が対象になるかは、必ず法令・通達の原文と、必要に応じて経済産業省への相談でご確認ください。
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