概要
輸出管理では、技術が貨物と並ぶ規制の柱です。
そして、その技術は3つに分類されます。
① 設計
② 製造
③ 使用
この3つは、規制の条文でそのまま使われる言葉です。「なんとなく設計っぽい」ではなく、それぞれ中身が決まっています。
そして、この分類が分かると、判断で迷わなくなります。


- 技術が「設計・製造・使用」の3つに分類されること
- いちばん見落とされる「使用」がなぜ重要なのか
- 技術データと技術支援という提供形態の違い
3つの中身

経済産業省の資料が示している内訳です。上の図のとおり、試作は「製造」ではなく設計、検査・試験・品質保証は製造、据付・保守は使用に入ります。ひとつずつ見ていきます。
① 設計
一連の製造過程の前段階のすべての段階
具体的には
□ 設計研究
□ 設計解析
□ 設計概念
□ プロトタイプの製作及び試験
□ パイロット生産計画
□ 設計データ
□ 設計データを製品に変化させる過程
□ 外観設計
□ 総合設計
□ レイアウト 等
「プロトタイプの製作及び試験」が設計に入るのがポイントです。試作は「製造」ではなく「設計」の段階、という整理です。
② 製造
すべての製造工程
□ 建設
□ 生産エンジニアリング
□ 製品化
□ 統合
□ 組立/アセンブリ
□ 検査
□ 試験
□ 品質保証 等
「検査」「試験」「品質保証」まで製造に入ります。
③ 使用 見落とされるのはここ
設計、製造以外の段階で、以下のもの
□ 操作
□ 据付
□ 保守(点検)
□ 修理
□ オーバーホール
□ 分解修理
据付・保守・修理・オーバーホールが「使用」に入ります。
これが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
なぜ「使用」が重要なのか

輸出管理を「貨物を出すとき」の話だと思っていると、アフターサービスが丸ごと抜けます。
【よくある流れ】
機械を輸出した
↓ 許可を取った/非該当だった
現地で据付する ← ★技術提供
↓
操作方法を教える ← ★技術提供
↓
定期点検に行く ← ★技術提供
↓
故障したので修理する ← ★技術提供
↓
オーバーホールする ← ★技術提供
貨物を出したあとに、技術提供が何度も発生します。
そして、貨物の輸出には税関がありますが、据付や保守には税関がありません。
「機械を売ったときに許可を取ったから、あとは大丈夫」、そうではありません。
「1の項」だけ例外がある
細かいですが、押さえておくと役に立ちます。
資料に、こう注記されています。
ただし、外為令別表の1の項における「使用」は、設計、製造以外の段階
1の項(武器)の「使用」は、範囲の取り方が違うということです。
武器は、あちこちで別扱いになる。これはこの分野で繰り返し出てくる型です。
提供の「形態」も2つに分かれる
技術の種類(設計・製造・使用)とは別に、どうやって渡すかの分類があります。役務通達の別紙1-2に定められています。
技術データ
文書又はディスク、テープ、ROM等の媒体若しくは装置に記録されたものであって、青写真、設計図、線図、モデル、数式、設計仕様書、マニュアル、指示書等の形態をとるもの又はプログラム
「モノ・データとして形がある」タイプです。プログラムも含まれます。
技術支援
技術指導、技能訓練、作業知識の提供、コンサルティングサービスその他 技術データの提供も含まれる
「人が教える」タイプです。
★注記があります。
注)クラウドコンピューティングサービス利用も規制対象となることがある
クラウドも視野に入っています。
整理すると、2軸で見ます

上の図のように、「何の技術か(設計・製造・使用)」×「どう渡すか(データ・支援)」の2軸で見ます。
案件を見るときは、この表のどこに入るかを考えてみてください。
「はみ出し技術」という考え方

もう1つ、重要な注意があります。資料にこう書かれています。
原則、リスト規制に該当する貨物に関連する技術が規制対象
注意:非該当貨物の製造技術(はみ出し技術)でも規制されることがある
「はみ出し技術」、覚えやすい呼び名ですが、意味は重いです。
【原則】
規制対象の貨物 → その技術も規制対象
非該当の貨物 → その技術も対象外
【ただし】
★非該当の貨物を作る技術でも、
規制対象の貨物を作れてしまう技術なら、規制されることがある
貨物が非該当だから技術も非該当、とは限りません。
「係る技術」と「必要な技術」

条文でよく出る2つの言い回しも、定義されています。上の図のとおり、係る技術=貨物の設計、製造又は使用に直接関係する技術。必要な技術=規制の性能レベル、特性若しくは機能に到達し、又はこれらを超えるために必要な技術です。
「必要な技術」のほうが、狭く限定されています。
【係る技術】
その貨物に関係していれば広く入る
【必要な技術】
★規制のスペックに到達/超えるために必要なものに限る
↓
スペックに関係ない技術は、含まれないことがある
条文にどちらの言葉が使われているかで、範囲が変わります。読み飛ばさないでください。
実務でどう使うか

初めての方向けに、使い方をまとめます。
【案件が来たら】
① 提供するものは、設計・製造・使用のどれか
② 形態は、技術データか技術支援か
③ 対応する貨物は、リスト規制に該当するか
④ ★該当しなくても「はみ出し技術」に当たらないか
⑤ 条文は「係る技術」か「必要な技術」か
【特に忘れないこと】
★据付・保守・修理・オーバーホールは「使用」
★アフターサービスの契約時に、輸出管理を通す
⑤まで自分でやるのは大変です。 迷ったら、経済産業省に相談窓口があります。
まとめ
- 技術は設計・製造・使用の3つに分類される
- 設計=一連の製造過程の前段階のすべての段階(プロトタイプの製作及び試験も設計)
- 製造=すべての製造工程(検査・試験・品質保証も製造)
- ★使用=設計・製造以外の段階。操作・据付・保守(点検)・修理・オーバーホール・分解修理
- ★アフターサービスは「使用」の技術提供。貨物を出したあとに何度も発生する
- 1の項(武器)の「使用」だけ、範囲の取り方が違う
- 提供の形態は技術データ(設計図・仕様書・マニュアル・プログラム)と技術支援(技術指導・技能訓練・作業知識の提供・コンサルティング)
- クラウドコンピューティングサービスの利用も規制対象となることがある
- ★「はみ出し技術」:非該当貨物の製造技術でも規制されることがある
- 「係る技術」=直接関係するもの/「必要な技術」=規制の性能レベルに到達・超えるために必要なもの。範囲が違う
さて、自社の据付・保守の契約は、輸出管理の確認を通っているでしょうか。


- 次に読む:輸出管理の「三本の矢」 — 該非判定・取引審査・出荷管理。実務の中心です
- あわせて読む:「みなし輸出」のからくり — 国内での技術提供
※ 分類・内訳は経済産業省 説明会資料「安全保障貿易管理の概要(初級編)」(令和7年度版)によります(出典は役務通達 別紙1-2)。制度・解釈は改正されることがあります。 実際の判断は必ず 役務通達 の原文でご確認ください。個別の技術が規制対象かは、法令・通達と、必要に応じて経済産業省への相談でご確認ください。
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