概要

前回、輸出管理には「どこへ送るか」という軸があるとお伝えしました。ただ、国だけを見ていては足りません

同じ国の中にも、慎重に扱うべき相手と、そうでない相手がいます。そこで経済産業省が公表しているのが外国ユーザーリストです。

835件の組織が、名指しで載っています。

みなとくん船長、名指しって……けっこう思い切ったリストですね
あんぼう船長そうじゃな。じゃがこれは取引禁止の名簿ではないんじゃ。そこを取り違える人が多くてな
## この記事で学べること
  • 外国ユーザーリストが「国」ではなく「組織」を名指ししたリストであること
  • 懸念区分・別名欄の意味と、国別の内訳
  • リストに載っていなくても安心できない理由

外国ユーザーリストとは何か

外国ユーザーリスト=「大量破壊兵器などの開発に関与している懸念がある、と経済産業省が判断した外国の組織の一覧」です。

これは、取引禁止の名簿ではありません
これは、取引禁止の名簿ではありません

大事なのは、これが「取引禁止リスト」ではないという点です。

載っている組織との取引が禁止されているわけではありません。リストに載っている組織へ輸出しようとする場合、用途の確認をより慎重に行う必要がある。そういう位置づけです。

補完的輸出規制(旧・キャッチオール規制)における、判断の手がかりとして使われます。

国別の内訳

835件を国・地域別に見ると、こうなっています。15の国・地域が対象です。

835件は、どこの組織か
835件は、どこの組織か
  • イラン:257件
  • 北朝鮮:154件
  • 中国:127件
  • パキスタン:103件
  • ロシア:100件
  • アラブ首長国連邦:29件
  • 香港:22件
  • シリア:19件

上位5か国で741件。全体の約9割を占めます。

「懸念区分」で何の懸念かが分かる

このリストの便利なところは、組織ごとに「何の懸念があるか」が示されていることです。

何の懸念があるかが、記号で分かる
何の懸念があるかが、記号で分かる

記号は4つです。Bが生物兵器、Cが化学兵器、Mがミサイル、Nが核。

組織によっては複数が付きます。実際の内訳を見ると、M(ミサイル)のみが268件、B・C・M・N(すべて)が184件、N(核)のみが139件、MとNが110件。

ミサイル関連が最多で、次いで4分野すべてに懸念がある組織が184件あります。

通常兵器の欄もあります

さらに、通常兵器に関する欄が別に設けられています。240件がこれに該当します。

大量破壊兵器(B・C・M・N)の懸念と、通常兵器の懸念は別の軸で管理されているということです。2025年10月の制度見直しで通常兵器キャッチオールが強化されたことを考えると、この欄の重みは増しています。

「別名」の欄がある理由

リストには別名(Also Known As)という欄があります。ここが実務上とても重要です。

名前は、一つとは限らない
名前は、一つとは限らない

同じ組織が、複数の名前を使っていることがあるからです。

  • 英語表記のゆれ
  • 略称
  • 改称前の名称
  • 関連会社としての別名

取引先の名前をリストで検索したとき、正式名称だけで探すと見落とします。 別名まで含めて確認する必要があるのです。

「名前は一つとは限らない」

載っていなければ安心、ではない

ここが最も誤解されやすい点です。

載っていなくても、安心ではない
載っていなくても、安心ではない

リストに載っていない=安全、ではありません。

外国ユーザーリストは、あくまで経済産業省が把握している範囲のものです。載っていない組織でも、用途や取引の状況から懸念があると判断されれば、許可が必要になります。

補完的輸出規制の客観要件は、「リストに載っているか」だけで判断するものではありません。

  • どんな用途に使うと言っているか
  • その説明に不自然な点はないか
  • 取引の経路に不審な点はないか

こうした点を、輸出者自身が確認する必要があります。

「リストは手がかりであって、答えではない」

改定が頻繁にあります

このリストは頻繁に改定されます

最近だけでも、2022年3月・2022年11月・2023年12月・2025年1月・2025年9月と改定が重ねられています。年に1〜2回のペースです。

改定のたびに、経済産業省から次の資料が公表されます。

  • 概要
  • リスト本体
  • 改定による変更箇所

この「変更箇所」の資料が便利です。前回からどこが変わったかが分かるので、社内の確認リストを更新するときに使えます。

社内システムに取り込んで使っている場合、更新を忘れると古いリストで判断し続けることになります。 定期的な更新の仕組みを持っておきたいところです。

まとめ

  • 外国ユーザーリスト=懸念のある外国組織を名指しした一覧。2025年9月29日改定版で835件
  • 取引禁止リストではない。用途確認をより慎重に行う必要があるという位置づけ
  • 15の国・地域が対象。イラン257・北朝鮮154・中国127・パキスタン103・ロシア100で約9割
  • 懸念区分はB(生物)C(化学)M(ミサイル)N(核)。ミサイル関連が最多
  • 通常兵器の欄が別にあり240件が該当
  • 別名(Also Known As)まで確認する。正式名称だけでは見落とす
  • 載っていなくても安全とは限らない。客観要件はリスト以外の要素でも判断される
  • 年1〜2回改定される。社内リストの更新の仕組みが要る

さて、あなたの会社では、取引先をこのリストと照合する手順があるでしょうか。あるとして、リストはいつ更新したものでしょうか。

ここまでの6本で、輸出管理の地図はひととおり描けました。次からは、それぞれの手順を実務としてどう回すかへ進んでいきます。

みなとくん船長、リストは見て終わりじゃなくて、更新まで含めて仕組みなんですね
あんぼう船長そこに気づけたなら十分じゃ。道具は持つだけでは足りん。手入れをして、はじめて使えるものでな
次に読むなら、こちらをどうぞ。

※ 件数・国別内訳は経済産業省「外国ユーザーリスト」2025年9月29日改定版によります。改定が頻繁なため、実務で使用する際は必ず経済産業省の公表ページで最新版をご確認ください。

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