概要
前回の積替規制では、日本を通過するだけの荷物も対象になる、というお話をしました。
今回は、さらに驚く制度です。
A国の会社が、B国の会社へ貨物を売る。貨物はA国からB国へ直接動くので、日本には来ません。でも、その取引を仲介したのは日本の会社。
この場合も、許可が必要になることがあります。
これが仲介貿易取引規制です。


- 貨物が日本に来ない取引でも許可が必要になる場合があること
- 貨物の仲介と、技術の仲介という2つの型
- この規制が効いてくる具体的な場面
経済産業省の説明

こう書かれています。
外国相互間の貨物の移動を伴う売買、貸借、贈与については、事前に経済産業大臣の許可が必要になる場合があります。
キーワードは「外国相互間」です。外国どうしの取引、という意味です。
そして、売買だけではありません。
対象になるのは、売買、貸借(貸し借り)、贈与(タダで渡す)の3つです。
タダで渡しても対象です。ここは輸出の考え方と同じですね。
なぜこんな制度があるのか
理由は、積替規制と同じです。抜け道を塞ぐためです。
もしこの制度がなかったら、どうなるでしょうか。日本から懸念国へ送れば規制されます。ところが日本の商社がA国の在庫を懸念国へ回せば、貨物は日本を通らないので素通りです。
日本の会社が関わっている以上、日本の責任で見る。そういう考え方です。
ここも2つのパターンに分かれます

積替規制と同じ構造です。上の図のとおり、輸出令別表第一の「1の項」は全ての国・地域へ、条件なしで対象。「2の項〜16の項」は別表第三の地域を除く全ての国・地域へ、大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれがある場合に対象です。
1の項(武器そのもの)は無条件。それ以外は懸念があるとき。
この型を覚えてしまってください。 積替規制も、仲介貿易取引規制も、まったく同じ形です。
1の項は全地域・無条件。2の項〜16の項はグループAを除く地域で、懸念があるとき。 この形が、この分野では繰り返し出てきます。
技術にも「仲介」があります

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
貨物だけではありません。技術にも、仲介取引の規制があります。
経済産業省の説明を引きます(少し長いですが、大事なところです)。
外国において、非居住者に対して技術の提供を行う場合、その技術の提供が我が国の居住者によって行われるのではなく、居住者から指示を受けた非居住者によって技術が提供される、あるいは我が国の居住者が外国において技術を取得し、そのまま別の外国で提供を行うような、我が国の国境外で行われる技術取引(いわゆる「技術の仲介行為」)についても、許可の対象となります。
分解すると、2つの型があります。
型①:日本の人が指示して、外国の人が渡す
日本の会社(居住者)がA国の人(非居住者)に指示を出し、そのA国の人がB国の人(非居住者)へ技術を提供する。この流れです。
日本の人は、技術を渡していません。指示しただけです。それでも対象になりえます。
型②:外国で受け取って、別の外国で渡す
日本の会社の人が、A国で技術を取得する。そのままB国へ移動して、B国でその技術を提供する。この流れです。
日本に持ち帰っていません。 それでも対象になりえます。
「日本の国境を越えていないから大丈夫」が通用しない、という点で共通しています。
技術の仲介には、除外があります

こちらは、貨物と条件が少し違います。
許可が必要になるのは
- 外為令別表の「第1の項」に該当する技術の場合
- 外為令別表の「2の項〜16の項」に該当する技術を、輸出令別表第三の地域を除く地域間で移転する場合であって、大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれがある場合
そして、重要な除外があります。
(同一の外国内、同一国の非居住者間での取引は含まれない)
つまり
A国からB国へ、国をまたぐなら対象になります。A国の中で完結するなら、対象になりません。
同じ国の中で完結する技術提供は、含まれません。
「地域間で移転する」というのが条件なので、移転していなければ対象外、という理屈です。
この制度が効いてくる場面

初めての方向けに、身近な例を挙げます。
- 商社が、海外在庫を第三国へ振り向ける
- 海外子会社どうしの取引を、日本本社が調整する
- 海外拠点から別の海外拠点へ、技術を回すよう指示する
- 現地法人に「あの会社に図面を渡しておいて」と依頼する
- 海外の展示会で得た技術を、そのまま別の国で使う
★4つ目が、いちばん見落とされます。
「日本から送っていない」「自分が渡したわけではない」。どちらも理由になりません。
グローバルに動く会社ほど関係がある
まとめると、こういうことです。
日本国内だけで完結している会社なら、関係は薄いでしょう。いっぽう、海外拠点を持っている、海外在庫を動かしている、三国間貿易をしている、海外拠点間で技術のやりとりがある。こうした会社は、関係が出てきます。
海外展開が進んでいる会社ほど、この制度の当事者になります。
そして厄介なのは、日本の輸出管理部門から見えにくいことです。日本を経由しないので、通関記録にも、出荷記録にも残りません。
社内のどこかで、誰かが動かしている。 それを拾える仕組みが要ります。
関係する法令
経済産業省が挙げているものです。
貨物(仲介貿易取引)
- 外国為替令
- 外国相互間の貨物の移動を伴う貨物の売買、貸借又は贈与に関する取引に係る貨物が核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める省令
- 外為法第25条第4項の規定に基づき許可を要する外国相互間の貨物の移動を伴う取引について
技術(技術の仲介取引)
- 外国為替令
- 貿易関係貿易外取引等に関する省令
- 同省令第9条第2項第七号イの規定により経済産業大臣が告示で定める提供しようとする技術が核兵器等の開発等のために利用されるおそれがある場合
名前が長いですが、覚える必要はありません。 「そういう省令・告示がある」と知っていれば、必要なときに引けます。
なお、経済産業省は仲介貿易取引規制に関するQ&Aも公開しています。自社(本邦法人)の海外支店が、その国からの輸出/その国への輸入を仲介する場合についてのQ&Aも別に用意されています。
まとめ
- 仲介貿易取引規制=外国相互間の貨物の移動を伴う取引も、許可が必要になる場合がある
- 売買だけでなく、貸借・贈与も対象
- 目的は、積替規制と同じく抜け道を塞ぐこと
- ★構造は積替規制と同じ:1の項は全地域・無条件/2〜16の項はグループAを除く・懸念があるとき
- 技術にも「仲介取引」がある:①日本の人が指示して外国の人が渡す ②外国で取得して別の外国で渡す
- ★技術の仲介には除外あり:同一の外国内、同一国の非居住者間の取引は含まれない
- 海外展開が進んでいる会社ほど当事者になる
- 厄介なのは通関記録にも出荷記録にも残らないこと。社内で拾う仕組みが要る
さて、あなたの会社で、海外拠点どうしのやりとりは、輸出管理の目に入っているでしょうか。


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※ 内容は経済産業省「仲介貿易・技術取引規制」(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/anpo05.html ・2026年8月2日確認)によります。制度は改正されることがあります。 最新の内容は 経済産業省 安全保障貿易管理 でご確認ください。個別の取引が対象になるかは、必ず法令・通達の原文と、必要に応じて経済産業省への相談でご確認ください。
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