概要

「うちの製品は規制リストに載っていないから関係ない」

輸出管理でいちばん危ない思い込みが、これです。

規制には二段構えがあります。リストで捕まえる一段目と、リストで拾えなかったものを拾う二段目です。二段目のことを、いまは補完的輸出規制と呼びます(かつてのキャッチオール規制)。

一段目だけを見て安心すると、二段目で漏れます。

みなとくん船長、リストに無ければセーフじゃないんですか
あんぼう船長そこがな、多くの人がつまずくところじゃ。網は二重に張ってあるんじゃよ
## この記事で学べること
  • 規制が「リスト規制」と「補完的輸出規制」の二段構えであること
  • 一段目は貨物の仕様、二段目は用途と相手で決まること
  • 2025年10月に二段目が何を変えたのか

二段構えのイメージ

二段構えのイメージ 規制の網は、二重に張ってある
二段構えのイメージ 規制の網は、二重に張ってある

上の図のように、目の細かい網(一段目・リスト規制)と、目は粗いが範囲の広い網(二段目・補完的輸出規制)が、上下に張ってあります。一段目をすり抜けた貨物を、二段目が受け止めるしくみです。

「貨物で捕まえる網」と「使われ方で捕まえる網」の二重張り

二段構えを1つずつ見る

一段目|リスト規制:貨物の仕様で決まる

一段目|リスト規制 一段目は、貨物の仕様で決まる
一段目|リスト規制 一段目は、貨物の仕様で決まる

リスト規制は輸出令 別表第一の1項から15項です。上の図のとおり、武器・原子力・化学兵器・生物兵器・ミサイルから、先端素材・材料加工・エレクトロニクス・電子計算機・通信・センサー・航法装置・海洋関連・推進装置・その他・機微品目まで、分野ごとに並んでいます。

特徴は、仕様(スペック)で決まることです。何ワット以上、何ミクロン以下、数値で線が引かれています。

だから判定は客観的です。仕様書と省令を突き合わせれば、該当か非該当かが決まります。そして、該当すれば行き先を問わず、原則どこへ送るにも許可が要ります

二段目|補完的輸出規制:用途と相手で決まる

二段目|補完的輸出規制 二段目は、用途と相手で決まる
二段目|補完的輸出規制 二段目は、用途と相手で決まる

こちらは考え方がまったく違います。貨物の仕様ではなく、「どう使われそうか」「誰に渡るか」で決まります

判断のきっかけは、上の図の3つです。客観要件(用途や需要者から見て、兵器開発などに使われるおそれがあると輸出者自身が判断できる場合)、インフォーム要件(経済産業大臣から「これは許可が必要です」と通知された場合)、文書等告示(一定の文書等に基づき対象となる場合)。

「貨物が白でも、使い道が黒なら止まる」

ここが実務で難しいところです。リスト規制と違い、輸出者が自分で「おそれがあるか」を考えなければならないからです。

2025年10月、二段目が変わりました

2025年10月、二段目が変わりました 名称も「キャッチオール規制」から「補完的輸出規制」へ
2025年10月、二段目が変わりました 名称も「キャッチオール規制」から「補完的輸出規制」へ

2025年10月9日、この二段目の制度が大幅に見直されました。名称も「キャッチオール規制」から「補完的輸出規制」へ変わっています。

主な変更点は次のとおりです。

  • 通常兵器キャッチオール規制に新しい制度が導入された
  • 特定品目という考え方が入り、HSコード(関税分類の番号)で対象が指定されるようになった
  • 顧客要件という新しい概念が加わった

特に注目したいのが特定品目です。一般国向けの通常兵器キャッチオール規制の対象として、12の品目が指定されました。上の図に一覧を載せています。

工作機械が6品目を占めているのが特徴的です。

行き先によって扱いが変わります

行き先によって扱いが変わります どこへ送るかで、二段目の網が変わる
行き先によって扱いが変わります どこへ送るかで、二段目の網が変わる

補完的輸出規制のもう一つの特徴は、仕向地(送り先)で扱いが変わることです。

輸出令 別表第三に掲げられた国、いわゆるグループA(27か国)向けには、通常兵器キャッチオール規制が適用されません。輸出管理の制度が整っている国として扱われるためです。

一方で、国連の武器禁輸国・地域(別表第三の二・10か国・地域)向けは、より厳しい扱いになります。

「どこへ送るかで、二段目の網の張られ方が変わる」

リスト規制が行き先をあまり問わないのと対照的です。

実務では、両方を通します

実務では、両方を通します 非該当でも、二段目は飛ばせない
実務では、両方を通します 非該当でも、二段目は飛ばせない

まとめると、輸出のたびに上の図の2つを確認することになります。① 該非判定(一段目)でマトリクス表と仕様書を突き合わせ、該当なら許可申請へ。非該当でも② 用途・需要者の確認(二段目)へ進み、相手は誰か・何に使うのか・行き先はどこかを見て、おそれがあれば許可申請へ進みます。

①で非該当だったからといって、②を飛ばしてはいけません。 ここが「リストに無いから関係ない」という思い込みの正体です。

まとめ

  • 輸出管理はリスト規制補完的輸出規制二段構え
  • 一段目は別表第一 1〜15項仕様(スペック)で決まり、行き先を問わず許可が要る
  • 二段目は用途・需要者で決まる。客観要件・インフォーム要件・文書等告示の3つがきっかけ
  • 2025年10月9日に大幅見直し。名称が補完的輸出規制へ変わり、特定品目・HSコード・顧客要件が導入された
  • 特定品目は12品目。うち6つが工作機械群
  • グループA(27か国)向けには通常兵器キャッチオールが適用されないなど、行き先で扱いが変わる
  • 非該当でも二段目の確認は必要

さて、あなたの会社では、非該当と判定した製品について、その後の用途確認まで手順に入っているでしょうか。

ここまでで「はじめての方」向けの8本は終わりです。業界の会話についていける土台ができました。

みなとくん船長、非該当でも安心できないって、けっこう怖いですね
あんぼう船長怖がる必要はない。手順に組み込んでしまえばよいだけじゃ。知らずに飛ばすのが危ないのでな
次に読むなら、こちらをどうぞ。

※ 2025年10月9日施行の見直しを反映しています。制度の詳細は経済産業省「補完的輸出規制」のページおよび関係通達をご確認ください。

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