「輸出管理の仕事に就きたい」と考えたとき、多くの方が「輸出管理部」の求人を探します。
それだけでは、機会をかなり狭めています。
経済産業省が示している輸出管理の体制図には、部門が5つ並んでいます。
最高責任者
│
┌────┬────┼────┬────┐
該非判定 輸出担当 輸出管理 出荷
部門 部門 部門 部門
このうち4つが、実務を担う部門です。
そして資料には、どの部署が担当するのが一般的かまで書かれています。
| 部門 | 担当するのが一般的な部署 |
|---|---|
| 該非判定部門 | 技術部門 |
| 輸出担当部門 | 営業部門 |
技術と営業が、名指しで出てきます。


この記事を読むと、あなたの就職活動はこう変わります
- 探す求人の幅が広がります
- 現職の経験が、どの部門で活きるかが分かります
- 自分に足りないものが具体的になります
- そのまま使える志望動機の型が手に入ります
この記事で扱うこと
この記事の後半では、あなたがどこに入るかを決められるようにします。
- 各部門の役割:資料の記述から。最高責任者は代表取締役(=輸出管理は経営の仕事)、取引審査の責任者は取締役から選任
- なぜ該非判定が技術部門なのか:貨物等省令のスペックと自社製品を突き合わせる作業だから
- ★体制図に「法務部門」の箱がないという事実を正面から扱う。法務の素養は輸出管理部門(司令塔)で使う:規程作成・改正追跡・監査・当局報告。面接での言い方つき
- 部署別・持ち込める強みと埋めるべき穴:技術系/営業系/法務・管理系/物流・貿易事務系の4類型で表に
- 「独立した部門は必須ではない」と資料が明記:「輸出管理部」がない会社にも仕事はある。求人の探し方が変わる
- どの部署にいても効く横断的な仕事:監査/教育/資料管理(★7年間保存)/子会社指導/報告。教育=社内に伝えることは、どこからでも関われる
- ★部署別の志望動機テンプレート4本。そのまま面接で使える形。共通して効くのは「自分の穴を自覚していること」
資料が「一般的」と書いている担当部門

METIの中級編パート2に、各部門の役割と「どの部署が担当するのが一般的か」が明記されています。
| 部門 | 担当するのが一般的な部署 |
|---|---|
| 該非判定部門 | 技術部門 |
| 輸出担当部門 | 営業部門 |
| 輸出管理部門 | (司令塔として置かれる) |
| 出荷部門 | (物流・出荷担当) |
技術と営業が、名指しで出てきます。
1. 各部門が何をするのか:資料の記述から

体制図の各部門について、資料はこう説明しています。
最高責任者
輸出管理全体を総括し組織として最終的な責任を負う。組織を代表するもの(代表取締役)がおこなう。
社長が最終責任者です。これは輸出者等遵守基準にも「統括責任者の選任」として定められている事項です。
輸出管理は、担当者の仕事ではなく経営の仕事、制度がそう設計されています。
該非判定部門
貨物等が法令で規制されているか否かを判断する責任を負い、技術部門が担当する場合が一般的となる。
なぜ技術部門か。 該非判定は、貨物等省令のスペックと自社製品の仕様を突き合わせる作業だからです。
貨物等省令:位置決め精度が0.006ミリメートル未満のもの
↕ 突き合わせ
自社製品 :カタログ値・設計値・試験成績書
製品の仕様を正確に把握しているのは、技術部門です。
輸出担当部門
貨物の輸出や技術の提供に責任を持ち、用途や需要者等の情報を収集する。製品等の販売による輸出の場合は営業部門となることが一般的となる。
用途と需要者の情報を集めるのが営業です。
これは考えてみれば当然で、顧客と直接話しているのは営業です。「何に使うのですか」「御社の事業内容は」を聞ける立場にいるのは、営業しかいません。
輸出管理部門
輸出管理の司令塔となる部門で輸出管理ルールの作成等、取引審査を実施する。取引審査の責任者は、取締役から選任することが求められる。
司令塔であり、取引審査の責任者は取締役から選任。つまり役員クラスの判断が要る位置づけです。
出荷部門
規制貨物等が誤って輸出等されることを防止するために同一性確認等の出荷管理を担当。
審査したものと出るものが同じかを最後に見ます。
2. 体制図に「法務部門」の箱はありません

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
METIの体制図例に、「法務部門」は登場しません。
これは意外に思われるかもしれません。「法令を扱う仕事だから法務だろう」と考えるのが自然だからです。
では、法務の人は関われないのか。そんなことはありません。 ただし入り方が違います。
【技術・営業】
→ 体制図に名指しで登場する。日々の案件に直接関わる
【法務】
→ 体制図には出てこない。
輸出管理部門(司令塔)の中から関わるのが実際
輸出管理部門が担うのは
□ 輸出管理ルール(内部規程・CP)の作成
□ 取引審査
□ 法改正の把握と社内展開
□ 監査
□ 違反時の報告・再発防止
規程を書く/改正を追う/監査する/当局に報告する。これは法務の素養がそのまま効く領域です。
つまり法務出身の方は、「輸出管理部門(司令塔)を目指す」という言い方が正確です。「法務部で輸出管理をやる」ではなく、「輸出管理部門で、法務の素養を使う」。
面接でこの言い方ができると、体制の理解度が伝わります。
3. 部署別・持ち込める強みと、埋めるべき穴
現職・志望職種ごとに整理します。
技術系
| 内容 | |
|---|---|
| 持ち込める強み | 製品仕様の理解/スペック値の読み方/試験成績書の解釈/設計変更の把握 |
| 埋めるべき穴 | 法令の構造(外為法→政令→省令→通達)/条文の読み方(「限る」「除く」)/リスト規制と補完的輸出規制の違い |
| 目指す位置 | 該非判定部門。将来的に該非確認責任者 |
技術系の強みは、この分野では非常に大きいです。該非判定は製品を知らないとできません。
営業系
| 内容 | |
|---|---|
| 持ち込める強み | 顧客との関係/用途を聞き出す力/取引条件の把握/不自然な引合いへの勘 |
| 埋めるべき穴 | 「聞いたことを記録に残す」習慣/外国ユーザーリストの照合/断る場面での説明の仕方 |
| 目指す位置 | 輸出担当部門。将来的に輸出管理部門へ |
営業から輸出管理へ移る人は多いです。顧客の実態を知っているのは、審査する側に回ったとき大きな武器になります。
法務・管理系
| 内容 | |
|---|---|
| 持ち込める強み | 条文の読解/規程の作成/改正の追跡/記録管理/当局対応 |
| 埋めるべき穴 | 製品知識(スペックが読めない)/現場の業務フロー/営業の事情 |
| 目指す位置 | 輸出管理部門(司令塔) |
穴は「製品知識」です。ここを埋めないと、該非判定の議論についていけません。
物流・貿易事務系
| 内容 | |
|---|---|
| 持ち込める強み | 通関実務/書類の整合性を見る目/出荷のタイミング感覚/HSコードの知識 |
| 埋めるべき穴 | 該非判定の考え方/技術提供の規制(税関を通らない領域) |
| 目指す位置 | 出荷部門。最後の砦を担う |
貿易事務からの転身は、実務との距離が近いです。同一性確認という出荷管理の中心業務は、書類を突き合わせる仕事そのものです。
4. 「独立した部門がなくても構わない」

未経験の方が誤解しやすい点を、資料が明記しています。
全て独立した部門を設置することが必須ということではなく、輸出管理の実務を行う担当者及び責任者を明確しておくことが目的。業態、規模等に応じて、実行可能な役割分担及び体制を構築することが重要。
5つの部門が全部そろっている会社ばかりではありません。
中小企業では、1人が複数の役割を兼ねるのが普通です。
【中小企業でよくある形】
社長 = 最高責任者
技術部長 = 該非判定部門 + 輸出管理部門
営業担当 = 輸出担当部門
出荷担当 = 出荷部門
つまり「輸出管理部」がない会社でも、輸出管理の仕事はあります。
求人票に「輸出管理」と書かれていなくても、貿易事務・営業事務・技術管理の求人の中に、この業務が含まれていることは珍しくありません。
求人の探し方が変わる。これが本節の要点です。
5. どの部署にいても効く「共通の仕事」

三本の矢とは別に、部門を横断する仕事があります。内部規程(CP)の基本的事項として整理されています。
④ 監査 ── 輸出管理の監査の体制及び実施の手続きを定め
定期的に実施する
⑤ 教育 ── 最新の法令の周知、必要な指導、
知識・技能習得のための研修を実施する
⑥ 資料管理 ── 輸出関連書類等を正確に記載・記録し、
★少なくとも7年間保存する
⑦ 子会社・関連会社の指導
⑧ 報告及び再発防止 ── 違反・違反のおそれがあるときは
速やかに経済産業省へ報告
★⑥の「7年間保存」は覚えておいてください。 面接で書類保存の話が出たときに、具体的な年数が言えると印象が違います。
そして
⑤教育は、どの部署にいても関われます。
技術部門の人が「この製品はここのスペックが効きます」と社内に説明する。営業の人が「こういう引合いは要注意です」と共有する。それが教育です。
輸出管理の経験がまだなくても、「社内に伝えること」から関われる。これは、キャリアの入口として現実的です。
6. 志望動機の作り方
部署別に、面接で使える組み立てを示します。
【技術系】
「該非判定は技術部門が担うのが一般的だと理解しています。
製品仕様を貨物等省令のスペックと突き合わせる作業は、
設計を見てきた経験が直接活きると考えています。
法令の構造は、METIの初級編・中級編パート1で学びました。」
【営業系】
「輸出担当部門の役割は、用途と需要者の情報を集めることだと
理解しています。顧客と直接話す立場だからこそできる仕事です。
一方で、聞いた内容を記録に残す点が実務では重要になるので、
そこは意識して身につけたいと考えています。」
【法務・管理系】
「METIの体制図には法務部門の箱はなく、司令塔は輸出管理部門です。
規程の作成・改正の追跡・監査・当局への報告といった領域で、
法務の経験を活かせると考えています。
製品知識が不足している自覚があるので、
該非判定の考え方から学んでいます。」
【物流・貿易事務系】
「出荷管理は最終関門で、審査したものと出るものの
同一性を確認する仕事だと理解しています。
書類の整合性を見てきた経験が直結します。
技術提供は税関を通らないので、そこは新しく学ぶ必要があると
認識しています。」
共通して効くのは、「自分の穴を自覚している」ことです。 強みだけを言う人より、何が足りないか分かっている人のほうが、この分野では信用されます。
まとめ
- METIの体制図は最高責任者+4部門。輸出管理部門だけが入口ではない
- 該非判定部門は技術部門が担当するのが一般的:資料に明記されている
- 輸出担当部門は営業部門が一般的。用途と需要者の情報を集めるのが役割
- 輸出管理部門は司令塔。取引審査の責任者は取締役から選任
- 出荷部門は同一性確認:最終関門
- 最高責任者は代表取締役。輸出管理は経営の仕事
- ★体制図に「法務部門」の箱はない。法務の素養は輸出管理部門(司令塔)で使う:規程作成・改正追跡・監査・当局報告
- 部署別の強みと穴:技術は法令の構造、営業は記録に残す習慣、法務は製品知識、物流は技術提供の領域を埋める
- 独立した部門は必須ではないと資料が明記。「輸出管理部」がない会社にも仕事はある。求人の探し方が変わる
- 横断的な仕事は監査・教育・資料管理(★7年保存)・子会社指導・報告
- 教育=社内に伝えることは、どの部署からでも関われる
- 面接では自分の穴を自覚していることが効く
さて、あなたの現職の強みは、4つの部門のどこに一番近いでしょうか。
次回は、面接で説明できる状態をつくるための「法令地図」を扱います。


※ 体制図と各部門の役割は経済産業省「安全保障貿易管理の実務(中級編パート2)」(令和7年度版・作成2025年11月時点)によります。担当部署の対応は「一般的」な例であり、企業により異なります。最新の内容は 経済産業省 安全保障貿易管理 でご確認ください。
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安全保障貿易の制度は、たびたび改正されます。安貿ナビでは、経済産業省・CISTEC・米国EARの新着を確認し、実務への影響をメールでお届けしています。
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